2018 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of spin logic using current-domain separated current-induced domain wall motion
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18K13805
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒川 雄一郎 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20749535)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ロジック回路 / 不揮発性 / 磁性細線 / 電流誘起磁壁移動 / spin orbit torque |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の「研究の目的」、および「研究実施計画」は電流と磁区の経路を分離したANDおよびNOT回路を作製し、動作を検証することである。本年度の研究ではその目標まで届かなかったが、一方、本研究の重要な要素である磁壁を動かすトルク、スピンオービットトルクを用いて電流と磁区の経路が同一である通常のロジック回路を作製して、動作の検証を行った。本研究以前の我々のグループの発表では、磁性細線に流れる電流から発生するスピントランスファートルクを用いてロジック動作させていた。したがって、スピンオービットトルクを用いてロジック動作を確認したことは先進的な報告例であると考えられる。実際の研究ではスピンオービットトルクを用いて二つのINPUTと一つのOUTPUTを持つY字型のGd-Fe合金細線を作製し、ロジック動作するかを検証した。また、Y字型細線の幅を変えることでどのような動作になるか調査した。Y字型細線の幅をすべて1:1で作成したところ、電流密度がINPUTとOUTPUTで異なることから磁区が設計通りに動かないことが分かった。一方、細線のOUTPUT側の部分だけ2倍の幅で作製したところ、細線のINPUTとOUTPUTで電流密度が均一となり、磁区が設計通りに動くことが分かった。また、INPUTが0,0、1,0および0,1のときはOUTPUTが0、INPUTが1,1のときにOUTPUTが1となることからこの回路はAND回路として動作することが分かった。また、INPUTとOUTPUTを逆にして動作させたところ、FUNOUT回路としても動作することも分かった。今後はこの結果を踏まえて電流と磁区の経路を分離したロジック回路の作製を行っていく。また、Gd-Fe以外にもロジック回路として使用できる材料があるかどうかも調査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画では電流と磁区の経路を分けたANDおよびNOTロジック素子を作製し、動作を検証する予定であったが、申請者の研究室のマシントラブルにより、想定通りに進まなかった。電流と磁区の経路を分けるために、電子ビームリソグラフィ装置を用いて異なるパターンを描画し、重ねて層を堆積する必要があったが、その場合1層目の酸化不純物層を、重ねて堆積する前に除去しなければならない。この酸化物層を除去する手段がなかったために、想定より遅れが生じた。しかしながら、これまで観察されていなかったスピンオービットトルクを用いたANDロジック動作を観察し、2019年の春の応用物理学会で発表したという実績を得た。したがって、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、申請者の研究室のマシントラブルは既に解決しているために、電子ビームリソグラフィ装置及び薄膜堆積装置を用いて、電流と磁区の経路を分離したANDおよびNOTロジック回路を作製し、そのロジック動作及び安定性を検証する。次にNOT回路とAND回路とを組み合わせることで、NAND回路が実現できるかどうかを検証する。 また、安定したロジック回路を作製するためには材料の探索も重要であることもこれまでの研究で分かっている。したがって、今回使用したGd-Feの材料構造の適正化、およびGd-Fe以外の材料の探索も並行して行っていく。具体的には異なる重金属層やGdと同じ希土類元素であるTbをドープするなどして新材料を開発し、そのスピンオービットトルクを測定していく。
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Causes of Carryover |
当該年度で作製したKerr顕微鏡に必要な顕微鏡カメラが想定を下回る価格で手に入ったため、差額が生じた。また、進捗状況の欄にも記入したが、マシントラブルにより実験が想定したよりも進まず、学会発表および論文発表に足るデータ集まらず、当該年度では旅費及び論文投稿費があまり発生しなかった。しかしながら、次年度では想定したとおりに研究が進めば旅費及び論文投稿費は計画通りに発生すると考えられる。また、本年度で磁区を動かすための電源により高精度なものが必要であるとわかったために、当該助成金を使用して購入することを計画している。
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