2018 Fiscal Year Research-status Report
土壌凍結・加熱サイクルを用いた土壌中の重金属類除去法の開発
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18K13826
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
小島 悠揮 岐阜大学, 工学部, 助教 (70767475)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地盤凍結・加熱 / 土中重金属移動 / 数値解析 / 吸着現象 / 水・熱・溶質同時移動現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,地盤を人工的に冷却・加熱した際に生じる地盤の凍結融解と土中水の蒸発現象を利用し,重金属汚染土壌中の重金属を一箇所に集積させ,除去する浄化工法の開発を目的としている.2018年度は,次の3点を中心に検討を行った.
①数値解析によって様々な冷却温度,加熱温度,土壌水分量が地盤中の水・熱・重金属移動にどのような影響を与えるのかを評価した.これにより,地盤の冷却温度はより低い方が冷却・加熱装置面に集積する重金属量が多いことが明らかになった.また低土壌水分時には水蒸気移動が卓越し,冷却・加熱装置面が極度に乾燥するために重金属の集積が生じないこと,高土壌水分時には,水移動が抑制され,重金属の集積量が低下することが明らかになった.室内実験のデザイン決定や実用化を考えた際に重要な知見が得られた. ②地盤凍結・融解時の水移動において重要な土壌特性である土中の氷含有量を測定する新技術の開発を行った.サーモTDRと呼ばれるセンサを用いて,地盤を加熱し,加熱後の水分量を測定することで氷含有量の測定を可能とした.既往研究で用いられる手法と比較し,高精度での測定が可能であることが示された.室内実験・野外観測において活用できると考えられる. ③実験室内で人工的な地盤の冷却・加熱工法を再現するための装置を開発した.射撃場跡地から採取した鉛による実汚染土壌を用いて異なる水分量,異なる冷却温度条件下にて実験を行った.その結果,土中の凍結・融解現象とそれに伴う水・水蒸気移動は確認されたが,重金属の移動は生じていなかった.実汚染土壌は重金属が土粒子に強く吸着しており,水移動に伴う輸送量が小さかったためと考えられる.土壌の種類にも依存するが,土粒子に吸着している重金属を脱着させるために酸や塩溶液の添加が必要であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値解析によって,最適な冷却・加熱方法と地盤状態に関して基盤となる知見を得ることができた.また,これまで困難とされてきた凍結地盤の氷含有量の測定手法に関しても開発のみではなく,その精度等の評価も完了している.室内での土壌冷却・加熱装置の開発も完了し,数値解析の結果に基づき室内実験を開始しているため,研究はおおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
室内実験による現象解明に継続して取り組む予定である.実汚染土壌を用いた場合,重金属移動が生じにくいことが本年度明らかになったため,土壌への酸もしくは塩溶液の添加を行い,再実験する予定である.また,実汚染土壌内の鉛濃度分布が若干不均一で,重金属移動量の定量化に影響を及ぼす可能性があるため,実汚染土壌に加えて模擬汚染土壌での実験を取り入れる.更に,土壌内に重金属吸着材で構成された吸着層を設置し,土中重金属除去効率の向上を検討する.これは,まず数値解析で効果を評価し,その後室内実験で再評価する予定である.
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Causes of Carryover |
今年度は数値解析及び室内実験の装置開発を中心に行ったため,「その他」に含まれる土中の重金属濃度測定に係る経費が減少した.次年度以降,解析サンプル数が増えるため,次年度以降に消化する予定である.また,本年度予定していた学会発表は,年度前半を室内実験装置の開発に費やしたため,次年度以降に見送った(既に次年度2件の発表を予定している).そのため旅費に関しても次年度以降に消化する.物品費に関しては予定通りに執行した.
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