2018 Fiscal Year Research-status Report
乾燥過程における不飽和土質特性の解明と乾燥に伴う遺構の損傷抑制法の研究
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18K13827
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 茉伊 京都大学, 工学研究科, 助教 (50781077)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不飽和土 / 乾燥収縮 / ひび割れ / 引張応力 / 蒸発 / 文化財の保存と活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
土構造物の損傷は,湿潤過程と乾燥過程の両方で生じるが,地盤遺構では乾燥によるひび割れ等の損傷が深刻である.本研究は,墳丘土(細粒分の多い砂質土)を中心に,乾燥過程における水分移動と,それに伴う間隙比変化・引張応力の評価手法を構築すること,そしてこの手法を用いて,乾燥による遺構への力学的影響を考慮した保存手法を提案することを目的とする.具体的には,(研究1)乾燥過程にある地盤の水分移動の評価,(研究2)土の乾燥に伴う間隙比変化・引張応力の測定と解析法の開発,(研究3)水分移動と応力・変形評価に基づく乾燥抑制手法の提案,に取り組む.このうち,本年度は,研究2に取り組み,二つの収縮試験を実施した.
◆自由収縮試験(間隙比変化を測定するための収縮試験) 恒温恒湿槽内で,直方体供試体を乾燥させる過程で,供試体重量の測定と画像解析により,それぞれ含水比と体積を算出し,間隙比変化を求めた.その結果,本研究では細粒分が40%程度の砂質土を対象としたが,乾燥過程で顕著な体積収縮が観察され,粘性土に限らず乾燥収縮ひび割れのポテンシャルが高いことが示された. ◆拘束収縮試験(引張応力を測定するための収縮試験) 土の内部応力測定法を考案し,ほぼ確立する段階に到達した.本手法は,拘束部材を入れた供試体を用いて,自由収縮試験と同様に乾燥させ,土と部材の作用反作用の関係を利用して,ひび割れに至る過程の土の内部応力を,部材に取り付けたひずみゲージで測定するものであるが,部材の剛性と土-部材の付着が測定上重要なポイントであることがわかった.部材が軟球程度の樹脂では,土の収縮に抵抗できないため,ひび割れは生じず,現段階ではアルミの板材が最適と考えている.また,土-部材の付着については,部材表面の摩擦を大きくする加工を施すと収縮時に土-部材間のすべりの防止に効果があることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拘束収縮試験については,供試体の寸法・作製方法,拘束部材の材料・形状,計測機器の選定等,複数の検討課題があったが,それぞれについて適切な条件を決定できた.乾燥過程における土の内部応力を実測した類似の既往研究はなく,独創的な試験法を考案した点で意義が大きい.また,本手法で測定した,ひび割れ時にはたらく土の引張応力は,別途行った直接引張試験で得られた,ひび割れ発生時の含水状態における引張強度とほぼ一致しており,測定値の妥当性を検証済みである. なお,本成果は,土木学会関西支部,地盤工学会および文化財科学会に論文を投稿中であり,それぞれ口頭発表を行う予定である. 以上の理由により,ほぼ期待通りの結果が得られたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
◆研究1 地盤の蒸発実験は,当初は飽和塩を用いて湿度調整を行う予定であったが,予備試験の結果,蒸発量が多い場合には飽和塩による調整が困難であることがわかった.そのため,研究2で実績のある恒温恒湿槽を用いる計画に変更し,カラム試験により蒸発挙動を調査する予定である.
◆研究2 次年度は,現段階での成果を学術雑誌で発表するとともに,二つの収縮試験を温湿度環境,土の初期含水比,細粒分含有率を変えて行い,試験法の適用範囲を確認するとともに,これらの条件が間隙比変化と引張応力に与える影響を調べる.また,既存のひび割れ解析を調査し,土の乾燥ひび割れへの適用を研究する予定である.
◆研究3 以上の二つの研究項目をもとに,最終年度に取り組む.地盤・構造物により収縮が拘束されている土構造物に適用し,乾燥収縮挙動の定量的評価を試みる.また,遺構の乾燥抑制法への応用を視野に入れ,乾燥による損傷が課題となっている遺構の情報を収集中である.
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Causes of Carryover |
当初,実験補助に必要な人件費・謝金を計上していたが,卒業研究の一環として学生が実験に取り組んだため,本項目に差異が生じた.また,本研究に関する最新情報の収集のため,旅費を計上していたが,一部は他の助成金で支払いをしたため,差異が生じた.以上の理由により次年度使用額が発生した.これについては,次年度に実施する蒸発実験の装置開発および計測機器購入に活用する計画である.
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Research Products
(3 results)