2018 Fiscal Year Research-status Report
離散体―連続体連成解析で紐解く柔構造擁壁の耐震性能:石積擁壁を中心に
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18K13829
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
橋本 涼太 広島大学, 工学研究科, 助教 (60805349)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 石積擁壁 / ブロック積擁壁 / 離散体-連続体連成解析 / 地震応答解析 / 鉛直地震動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、柔構造擁壁の地震時応答シミュレータとして開発を進めている不連続性岩盤解析手法であるNMM-DDAの妥当性検証を目的として石積擁壁の模型振動台実験を実施し、その再現解析を行った。 実験はオーストラリアのニューサウスウェールズ大学との共同研究として現地大学所有の水平・鉛直二軸振動台を利用して実施した。背面地盤にはシドニー砂を使用し、石材をコンクリート製ブロックで模擬した。加振条件はテーパーつき正弦波による水平加振を基本ケースとして、崩壊(石材の滑り出し)時の加速度を検討した。また、ブロック間の摩擦抵抗で土圧に抵抗する石積擁壁では鉛直動が安定性に影響を与えることから、鉛直動を考慮した実験も実施した。この際、水平動と鉛直動の位相差による挙動の違いも検討するため、鉛直方向には水平方向と同位相あるいは逆位相のテーパー付き正弦波を入力する2ケースを行った。模型実験結果からは今回設定したブロックの積層条件ではいずれの加振条件でも最下段のブロックから滑りが生じて主働破壊することがわかった。ただし、滑り出しのタイミングは加振条件によって異なり、水平動と同位相の鉛直動を入力したケースがもっとも早く(小さな加速度で)破壊し、水平動のみのケースがもっとも破壊が遅かった。 以上の実験結果に対しNMM-DDAによる再現解析を行った。ブロックをDDAで地盤をNMMでモデル化し、実験で使用したブロックの摩擦係数、砂の強度定数を用いて実験と同じ条件で加振した結果、鉛直動の有無による滑り出し時刻やその後の変位量の違いを定量的に再現することができ、NMM-DDAの石積擁壁への適用性が示された。 実験および解析結果で観察された破壊メカニズムより極限釣合い式を導出し、破壊タイミングについて検討した結果、石積擁壁の崩壊タイミングと形態は地盤の主働破壊と石材滑りのいずれが先に生じるかで決定されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初より計画していた石積擁壁の模型振動台実験が滞りなく完了し、さらにはNMM-DDAを用いた再現解析についても定量的に合致する結果を得ることができた。これにより開発中の数値解析法の妥当性を検証できた。それに加えて、実験および数値解析結果に基づき極限釣合いに基づく安定性評価式を導出し、加振条件による挙動の違いを説明できた点は大きな進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、これまでにその妥当性が検証されたNMM-DDAを用いて様々な構造条件下での石積擁壁の地震時挙動を総合的に検討し、脆弱な構造条件を明らかにする。具体的には、石材の寸法や形状、積み上げる段数、勾配といった条件に関するパラメトリックスタディをを行い、そのシミュレーション結果に基づき崩壊メカニズムを整理し、極限釣合い式を導出することで、より汎用性の高い安定性評価手法を提案する。
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Causes of Carryover |
模型実験の計測用にハイスピードカメラの購入を予定していたが、コンパクトデジタルカメラ(本研究課題にて購入)の高速撮影機能にて対応したためその差額分が次年度使用額となった。研究計画よりもスムーズに数値解析手法の検証が進んだ結果、次年度は多くのパラメトリックスタディを実施することとなったため、多くのケース数を同時に検討できるよう計算機環境の拡充に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)