2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K13834
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
渡部 哲史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (20633845)
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| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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| Keywords | 気候変化 / バイアス補正手法 / 流出量 / ダウンスケーリング / 水文モデル |
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| Outline of Annual Research Achievements |
流出量補正に関する統計的ダウンスケーリング手法の開発を進めた。具体的には，ダウンスケーリング手法の一つであるバイアス補正手法について全球および日本域詳細の2つの空間スケールを対象とした開発を行った。
全球を対象とした研究では現在気候，1.5度および2.0度上昇時の数千年分の実験結果を対象に上記の手法を適用した。それらの過去再現性を確認したところ，補正前に比べ50％の誤差が削減できることを明らかにした。さらに年最値に関する平均値に関しては80％の誤差が削減できることを明らかにした。流出量について補正した結果を河川流路網モデルに入力し河川流量を求めたところバイアス補正の有無で気候モデルにより25～50％の差が生じることが明らかとなった。
日本域を対象とした手法に関しては，現在気候と4度上昇時の数千年分の実験結果を対象として手法を適用した。全球を対象とした実験が0.5度であるのに対して日本域では20kmの空間解像度を対象とした実験を実施した。全球では参照値となる流出量実験結果があるのに対して，日本域ではそれらの値が未整備であったことから，陸面過程モデルを用いた現在再現実験を実施した。これらの結果を主要な流量観測結果と比較したところ，両者の差が大きかったことから，流出量の基となる20kmの降水量データセットの整備に課題があることが明らかとなった。
再現実験の実施に加えて，これらのダウンスケーリング手法やバイアス補正手法に関する社会での需要が高まっていることから，それらの需要に応えるべく，これまでに開発されてきた手法に関するレビューも行った。次年度に総説として公開すべく引き続き準備を進める。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流出量に関する統計的ダウンスケーリング手法の一つとしてバイアス補正手法の開発を行い，全球では概ね適切な再現結果を得ることに成功した。これらの結果は次年度に国際学会で発表予定である。さらに学術雑誌への投稿も進めている。ダウンスケール手法の一つといえるバイアス補正手法の適用が可能となったことから，当初の予定通りの進捗であると評することができる。これらの結果に加えて，開発した手法をより詳細な空間解像度に適応した場合として，日本域を対象とした実験に関しても追加的に行った。日本域の実験に関しては参照値に関する精度の向上が今後の課題として残ったが，今後改良するべき方向性を明確にすることができた。
バイアス補正以外のダウンスケール手法についてはその特徴の把握を進めた。次年度以降にこれらの具体的な手法を構築するために必要な準備が整ったという点から，当初の予定通りの進捗であると評することができる。また，ダウンスケーリング手法の開発と共に，開発した手法群の評価方法の検討も進めた。流出量に関するダウンスケーリング手法は降水量などの既往の研究と比べ，参照値となるデータに制限があるのが困難な点である。従来良く行われているような，期間を較正と検証の2つに分ける方法は難しい。この点を踏まえて，現在気候のうち参照値が利用できない期間の予測を行い，その変化量を比較する方法の検討を行った。この評価方法は次年度において活用する予定である。この点からも順調に研究は進捗していると評することができる。
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| Strategy for Future Research Activity |
ダウンスケーリング手法としてこれまで集中的に開発してきたバイアス補正手法以外の，その他のダウンスケーリング手法の開発に取り組む。従来の気象変数に対するダウンスケーリング手法を基に，流出量に対するダウンスケーリング手法を開発する．ダウンスケーリング手法は大きく，回帰モデル，天気図分類，ウェザージェネレータ，バイアス補正に分類可能である．それぞれの手法を流出量に対するものに拡張することを試みる。
ダウンスケーリング手法の開発に加えて，開発したバイアス補正手法に関する，より詳細な検証も進めて行く予定である。将来予測を扱うという面では将来変化トレンドに関した検証が必要である。ダウンスケーリング手法は過去の情報を基に手法が開発されるが，それが将来も同様に成り立つという保証はない。これはダウンスケーリング手法すべてが有する限界であるが，既往研究において，少なくとも気候予測情報が示す将来変化トレンドが，ダウンスケーリング手法によって意図せず変更されないようにするのが望ましいという考え（トレンド保存という）が示されている。この点を踏まえ，今回開発したダウンスケーリング手法が将来変化トレンドにどのような影響を与えているかを明らかにする。
ダウンスケーリング手法の内のバイアス補正手法については，他の手法と比べて簡便であることから，影響評価研究における需要が大きい。しかしながら，手法の理解不足により目的に適した手法の選択が行われていない場面も少なくない。これらの背景からバイアス補正手法に関する手法の特徴の整理やそれに基づく手法選択法に関するとりまとめも重要であると考えている。これらについても引き続き取り組む予定である。
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| Causes of Carryover |
当初計画では解析用ワークステーションを購入する予定であったが，計算機実験を進めるにあたり，ワークステーション購入よりも比較的少額のデスクトップPCを複数台購入し，それらの各マシンで独立して実験を行う方が，実験が効率的に進むことが判明した。この点を踏まえ，実験に応じて適宜少額のデスクトップPCを追加する方針とした。本年度はそれらの内の一部のみを購入し，複数台利用に必要な環境の設定を行い，次年度にこれらの追加を行う計画である。故に，本年度の物品費の一部を次年度使用することとなった。また，これらの作業に伴う謝金も同じく次年度使用することから次年度使用額が生じた。
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