2018 Fiscal Year Research-status Report
流域圏を対象とした気候変動抑制に向けた温室効果ガスの源である炭素流出機構の解明
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18K13835
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
丸谷 靖幸 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 特任助教 (50790531)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分布型水文・物質動態モデル / 陸域物質循環モデル / 物質動態 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上で早急に対応すべき課題として,気候変動の抑制が挙げられる.その要因である温室効果ガスのソースである炭素の収支については,現地観測や全球シミュレーションにより研究されているものの,山地から平野,沿岸域といった人々が生活する流域圏を対象とした研究例は少ない.そこで本研究では流域圏に着目し,炭素流出機構を解明し,定量的に炭素流出量を推定可能な手法を構築することを目的とする. 本年度は,物質(主なターゲットは炭素)流出機構を再現可能な水文流出モデルの構築に取り組んだ.これまで申請者が用いてきた分布型の水文流出モデルでは浸透過程や地下水流れなどが考慮されておらず,例えば平水時の河川流量が過小評価される傾向にあり,流域圏における物質動態を考える上でこの点は課題となっていた.ただし,高精度なモデルを取り入れた場合,計算時間間隔を細かく取る必要が出るなどの問題もでるため,構築したモデルには複数層のタンクモデルを導入することで,洪水時および平水時の河川流量を再現可能となるように構築した.構築したモデルは,複数の流域へ適用し,改良したモデルの精度検証及び汎用性についても評価を行い,一定の成果を得た. 流域圏における物質動態の解明に向け,陸域物質循環モデルと水文流出モデルの結合時に課題となる,異なる座標系および空間解像度の情報の入出力を可能とする手法を構築した.さらに,陸域物質循環モデルによる物質量を水文過程に則り流出機構を表現可能とするため,移流拡散に関する項を水文流出モデルへ導入した. さらに,気候変動が流域圏の水・物質動態に与える影響についても,本研究で構築した水文流出モデルに多くの研究で利用されているCMIP5による全球気候モデルおよび大規模アンサンブル気候データベース(d4PDF)による降水量,気温を入力値として利用し,気候変動により将来の水・物質流出量が増加する可能性を示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,利用する水文流出モデルで課題となっていた平水時の再現精度の改善に取り組み,解決させることが出来たことは順調に研究が進んでいると考えている.また,陸域物質循環モデルとの結合についても,当初想定していたモデルとは異なるモデルとの結合にはなったものの,計画通り順調に進んでおり,この点についても順調に研究が進んでいると考えている. また,気候変動が流域圏における水・物質動態に与える影響についても,当初の計画通り,複数の流域で実施しており,順調に研究が進んでいる. さらに,研究を進めていく上で当初の計画に加えて,複数の流域を対象にした研究に取り組むことが出来ることとなり,本研究の目的の1つでもある複数の流域にも適用可能な手法の構築,を実施する上で良好に研究が進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築した炭素流出機構を再現可能な水文流出モデルの精度向上に向けて,改良を加えていく.具体的には,既往の研究で構築されている,流域を土地利用や土壌,標高などの要素で分割し,土壌内での物質の分解等を再現している準分布型水文流出モデルを参考に,本研究で構築している水文流出モデルに不足している部分を反映させていく予定である. また,本年度に引き続き,陸域物質循環モデルと構築している水文流出モデルの結合について取り組み,より精度良く流域圏における水・物質動態を再現可能な手法を開発する.さらに,昨年度は1つの陸域物質循環モデルのみであったが,本年度は複数の陸域物質循環モデルとの結合を行い,異なる陸域物質循環モデルによる流域圏の水・物質動態の予測精度の検証についても取り組む予定である. さらに,モデルによる検討だけではなく,本年度取り組んできた複数の流域において,水・物質動態に関する観測を実施し,本研究で構築するモデルの再現精度の検証を行い,汎用性の高い数値モデルの開発を進めていく. 加えて,本年度と同様に,気候変動が流域圏における水・物質動態に及ぼす影響についても検討を引き続き,行っていく予定である.
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Causes of Carryover |
当初の計画では,現地観測に伴う旅費および物品購入のために予算を確保していたが,本年度は水文流出モデルの構築および陸域物質循環モデルと構築した水文流出モデルとの結合の部分に重点を置き,研究を進めたため,使用額に差異が生じた.ただし,本年度において数値モデルの構築に方向性が定められたため,次年度は構築した数値モデルの精度検証に向けた観測データの取得に力を入れる予定である.そのため,本年度の残額分を利用し,現地観測に必要な物品の購入および現地観測への旅費に利用する予定である.
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Research Products
(9 results)