2018 Fiscal Year Research-status Report
Social Network Analysis of Knowledge Transfer with a Focus on Context and Physical Environment
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18K13845
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小谷 仁務 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30814404)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク / コンテクスト / 知識・情報伝達 / 災害復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の社会の防災や復興に関する知識や技術が別の社会に持ち込まれるとき、それらはカスタマイズされながら普及し、根付いていくことが持続性の観点から望ましい。本研究は、知識や情報の普及過程における「コンテクスト」やそれを規定しうる「物理的環境」の役割を定量的に評価可能な社会ネットワーク分析手法の開発を目的とする。 平成30年度は次の3つの分析を重点的に進めた。 (1) 社会ネットワーク形成過程における物理的環境の機能評価に関する実証分析を行った。ここでは、祭りや地域行事などを行える広い空間をもつ土木インフラ(物理的環境)が存在するコミュニティにおいて、住民がそれらのイベントへ参加することを通じて日常生活の社会ネットワークが拡大する過程をモデル化した。パラメータ推定手法も提案し、神戸市の商店街コミュニティへの適用を試みた。物理的環境がネットワーク形成に果たす機能を定量的に評価する手法の基礎を築いたといえる。 (2) 社会ネットワーク形成と知識の普及過程に関する理論分析を行った。相手のもつ知識・情報に対する選好を基にネットワーク形成が進み、個人の知識・情報の構成も内生的に変化する過程をモデル化した。ネットワーク形成と個々人がもつ知識・情報の変容を同時に分析可能な枠組みを示した。 (3) ネットワーク上での情報伝達において情報の出し手と受け手の間に存在するコンテクストに着目し、特定のコンテクストの下で得る情報が受け手の行動に与える影響について実証分析を行った。具体的には、2015年ネパール・ゴルカ地震の被災農村コミュニティを対象に、どのような内容の情報をどの情報源から得ることが家計の住宅再建行動を促したのかを分析した。結果として、住民間で共有すべき情報と政府が主導的に伝えるべき情報に違いがあることがわかった。情報内容に応じた適切な伝達経路を明らかにするための分析枠組みを示したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Social capitalや土木計画学、災害研究に関する国際ワークショップや国内・国際学会において、平成30年度の成果の一部を口頭発表した。また、実証分析の成果を査読付論文として国際誌 (Computational and Mathematical Organization TheoryとInternational Journal of Disaster Risk Reduction)で発表した。フィールドで得られた防災や復興に関する知見も論文にまとめ、国際誌に投稿中である。ネットワーク分析を軸に、「コンテクスト」、「物理的環境」、「知識普及」の各テーマを関連付け研究を進められており、国内外で成果も発表できていることから順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の分析結果の内、論文としてまだ発表できてないものを国際誌へ投稿する。また、フィールド調査において地域の背景や社会ネットワークに関する有用な定性情報が得られため、これらの定性情報を活かせるような手法の開発を目指す。国内外の知識や技術の普及に関する様々な事例を対象とした分析を行い、各フィールドへの知見の提供はもちろん、開発する手法の適用可能性の検証も試みる。
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