2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of efficient nonlinear analysis method for large and complicated building structure
Project/Area Number |
18K13864
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
藤田 慎之輔 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (80775958)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 加速勾配法 / 大規模問題 / ラインサーチ / 全ポテンシャルエネルギー最小化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から継続して行っている数値実験の結果より,完全弾塑性モデルと,高次非線形性モデルの2種類の性質の異なるモデルに対して,材料非線形解析を構造物の釣合解析を行う際に適応再スタート付き加速勾配法(以下,加速勾配法)を利用した場合,他の勾配法を利用した場合と比べて,特に大規模問題においては計算時間に優位性を示すことが確かめられた。本年度は同実験結果を査読論文としてまとめ上げ,同年中に論文が日本建築学会構造系論文集にアクセプトされ公開された。 その後,査読者からの意見として各種勾配法の収束性能の比較をより詳細に検証すべきと指摘されたこともあって,加速勾配法を含む複数の勾配法に対する数値実験結果をさらに充実させるとともに,加速勾配法の収束性を左右する要素の一つであるラインサーチの手法について,①固定ステップ幅,②黄金分割法,③バックトラック法の3つについて比較実験を行った。その結果,①に関してgershgorinの定理を用いて全体剛性行列の最大固有値の上界を求め,その逆数を固定ステップ幅とした方法が,②,③よりも特に大規模問題の解法としては収束性に優れていることが確かめられた。逆に,従来の方法である共役勾配法に対しては,①よりも②のほうが有効であり,アルゴリズムによって最適なラインサーチの方法が異なることも確かめられた。 同研究成果は,AIJSA2019で公開した。コロナ禍により2020年12月に延期となった国際会議COMPSAFE2020でも発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,申請書には「大規模な2次元トラス,3次元トラス,2次元骨組,3次元骨組の4種について,それぞれ材料非線形解析,幾何学的非線形解析,複合非線形解析を全ポテンシャルエネルギー最小化として定式化し,適応再スタート付き加速勾配法を用いて解き,その有効性を検証する」ことを計画していた。実際,2次元骨組に対する幾何学的非線形解析や,2次元及び3次元トラスに対する材料非線形解析に対しての加速勾配法の適用については既にアルゴリズムを実装し研究成果を論文化済である。 一方,本年度は,昨年度の報告書では幾何学的非線形/複合非線形解析に対して加速勾配法を適用する所まで研究を進める予定であったが,そこまでには至っていない。理由としては,幾何学的非線形/複合非線形解析へ加速勾配法を適用することよりも,加速勾配法そのものの収束性についてより深く検証すべきであると考え,当該命題を実証する方向に研究の舵を切ったためである。事実,本年度アクセプトされた査読論文の審査の過程において,各種勾配法の収束性能の比較をより詳細に検証すべきという意見を頂戴しており,学術的にも重要であると考えられるためである。昨年度報告書に記載した研究計画とは本年度の研究内容がやや異なるため,研究の進捗としては「当初の計画通りには」進んでいない。 しかしながら,歩んでいる道筋が異なるだけで,「形態が複雑化・大規模化する建築構造物に対する効率的な非線形解析手法の開発」という目標に対しては着実に前に進んでいると考えられるため,本研究課題のゴールを見据えて考えれば「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べた通り,加速勾配法の適用範囲を広げる事よりも,構造物の釣合解析に加速勾配法を適用する際の収束性能についての改善や検証を行うことに研究の舵を切ったため,本研究課題の最終年度となる2020年度も,同様のベクトルで研究を進めていく。 現状,大規模問題となる構造物の釣合解析に対しては,最急降下法や共役勾配法,準ニュートン法などと比較して加速勾配法が早期に停留解に収束することが確かめられており,加速勾配法自体の収束性能の改善のためにラインサーチの方法についても検証されている。一方で,これらの数値実験は,いずれも"勾配法同士"の比較実験に留まっている。構造物の釣合解析は,全ポテンシャルエネルギー最小化問題を解く方法の他に,剛性方程式を直接解く方法が存在する。実務で良く利用されている構造解析ソフトウェアの多くは後者の方法に基づいており,そちらとの比較実験を行う必要がある。厳密に収束性能の比較を行うためには,プログラミング言語を揃えて1からすべてプログラムを実装する必要がある。 過去2年間では,全てPythonを用いて加速勾配法のアルゴリズムを実装しているので,剛性方程式を直接解くソルバについても,C言語などでコンパイルされたライブラリを用いるのではなく,ピュアなPythonコードで記述し,加速勾配法との比較を行う予定である。 もちろん,同数値実験と並行して,当初の研究計画に記載していた通り,幾何学的非線形/複合非線形解析に対しての加速勾配法の適用についても,実施を視野に入れるが,優先順位としては,同一の構造物の釣合解析を全ポテンシャルエネルギー最小化問題として加速勾配法で解く場合と剛性方程式を直接解く場合との比較実験を先頭に置き,研究を進めていく予定である。
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