2018 Fiscal Year Research-status Report
油圧式変位増幅機構を有するマスダンパを用いた免震構造物の応答制御手法の開発
Project/Area Number |
18K13874
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡井 一樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (30778189)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 油圧式変位増幅機構 / リンク式流体慣性ダンパ / 免震構造物 / 粘性減衰効果 / リリーフ機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で提案する油圧式変位増幅機構を有するマスダンパ(パッシブマスドライバー)は、免震構造物の上部構造最上階に設置した錘(マス)と免震層の変形をリンクさせて、免震層の変形を増幅させて錘に入力することで応答制御を行うシステムである。本システムは、免震層の変形を制御しつつ、上部構造の応答低減効果にも期待できる。また、錘の制御方法によっては上部構造の転倒モーメントを低減できるため、ロッキング応答の抑制にも期待できるシステムとなっている。 2018年度は提案するシステムの根幹をなす油圧式変位増幅機構の設計について、より詳細な検討を行った。解析的な検討により、免震構造物の応答制御にパッシブマスドライバーを用いるためには粘性減衰の効果を極力抑える必要があることを確認した。しかし、油圧式変位増幅機構として用いるリンク式流体慣性ダンパは、提案するシステムに対しては粘性減衰効果が大きすぎることが明らかになった。そこで、リンク式流体慣性ダンパに油圧式変位制御機構としての機能を保ちつつ、粘性減衰効果を頭打ちにするためのリリーフ機構を導入することを提案した。リンク式流体慣性ダンパの内部圧力分布は通常のオイルダンパと比較して複雑であることから、まずはシリンダをリンクさせずに1本の場合について検討を行い、流体慣性ダンパに対するリリーフ機構の基本特性を検証した。この検討で得られた知見を基にシリンダを2本接続した場合のリリーフ機構の設計や配管方法の検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で提案している油圧式変位増幅機構として用いるリンク式流体慣性ダンパについて、本システムに適用できるように設計を見直した。しかし、変更した仕様を適用して小型ダンパを用いた性能検証試験を実施したところ、意図した効果が得られなかった。その原因を探ることを目的として、ダンパのシリンダ接続数を2本から1本に変更し、リリーフ機構を適用するための基本性能検証試験を実施した。この結果をもとにダンパの設計を見直しているために、当初の予定からは進捗は遅れているものと判断した。しかし、追加で行った基本性能検証試験から得られた結果から、本来の目的であるリンク式としたダンパの設計が行えるようになった。次年度も引き続きダンパの性能検証試験を行いながら解析的検討等を並行して進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の検討では、ダンパの性能設計としてシリンダの接続数を1本とした場合についての実験しか行えていない。そこで、シリンダの接続数を2本としてダンパを構築した場合においても粘性減衰効果を抑えるリリーフ機構を適用できるか実験的に検証する。次いで、ダンパの性能検証試験から得られた知見を基に、解析モデルに適用するダンパの減衰効果を再構築し、意図通りの制振効果が得られるか検討する。また、小型フレームによる振動台実験を計画し、解析的に得られている提案システムの挙動を実験的に検証する。試験体は鋼材で構成するものとし、免震構造物を想定して長周期の試験体を設計する。また、本実験と解析的検討を比較することで、提案システムの制振原理の妥当性を検証する。
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Causes of Carryover |
本研究の申請時に計画していた、新たなダンパを製作することができなかったため。今年度は申請者が以前製作した小型ダンパを用いて基本的な性能を検証し、次年度以降に予定している小型フレームを用いた振動台実験を想定した新たなダンパを製作する予定であった。しかし、はじめの性能検証試験において、意図通りの結果が得られなかったために、基本性能試験を再計画して当初の予定よりも多くの実験を行った。次年度以降には本実験結果を基にダンパへの新たな付加機構等を製作する予定である。
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