2018 Fiscal Year Research-status Report
明治期・条里地割分布地域における集落の土地等級と所有関係からみた空間形成の特質
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18K13901
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
秦 憲志 滋賀県立大学, 地域共生センター, 主席調査研究員 (50760815)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 集落 / 条里地割 / 土地等級 / 所有形態 / 空間形成 / 農村計画 / 都市計画 / 歴史的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治期地租改正事業を発端とした近代土地租税制度の整備過程において作成された地籍図、土地台帳、実務文書等を活用して、条里地割分布地域における明治期の農村集落の空間構成の実態を明らかにすること。また同一地域内および他地域における集落の比較分析により、共通する空間形成上の特質を把握し、条里地割を踏襲する集落空間がどのように形づくられてきたのか、その法則性を明らかにすることを目的とする。これらの目的を達成するため、以下の取組を行った。 1.滋賀県旧栗太郡北東部地域での調査研究:葉山村と大宝村エリアの18集落を対象に資料調査を行い、11集落について明治期の地籍図をもとに農地一筆ごとの土地等級を整理した。うち2集落について農地の等級分布空間図を作成した。また土地台帳調査をもとに、分析データを作成した。 併せて、土地等級の設定過程を把握するため、栗東歴史民俗博物館所蔵の『里内文庫』史料や滋賀県(県政史料室)所蔵の文献調査を行った。 2.滋賀県外における比較対象地域の調査研究:条里地割の形態をよく引き継いでいる福井県越前市国高地区の稲寄町を対象として、農地の空間配置をモデル化した。また、土地台帳より農地の等級を明治期の地籍図に転記し、集落全体の農地の空間的特質を把握し、地域分類を行った。次に、昭和40年前後の農地の所有状況を把握し、屋敷位置と所有規模を軸に農地の所有パターンを分析し、モデル図を用いて細分化、分散化している所有形態の多様性を空間的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較対象地域である福井県越前市国高地区の調査研究を滋賀県旧栗太郡北東部地域に先行する形で進めている。 データ整理は、江ノ西土地改良区エリアの稲寄町、瓜生町の他、今日の農地保全や地域の空間管理についての分析を行うことまでを視野において、隣接する龍ヶ淵土地改良区エリアで昔からの形態の農地がよく残っている村国の一部と長土呂町、馬上免町についても、土地台帳調査と明治期の地籍図作成を行った。 その結果、越前市稲寄町をモデルとして、条里地割を踏襲する集落空間の変遷について、農地の所有形態を軸に分析する手法を一定、構築することができた。つまり、農地の空間配置をモデル化し、土地等級等の特性を基にした地域分類を行うことで、農地の所有形態と所有パターンの空間的分析が容易に行えるようになった。瓜生町においても同様に分析作業を進めており、必要に応じて、龍ヶ淵土地改良区エリアの村国の一部と長土呂町、馬上免町にも地域を広げ、共通する空間構成上の特性を把握することが今後の課題である。 一方、滋賀県旧栗太郡北東部地域においては、地籍図調査と土地等級の実態把握は進んでいるが、土地等級による集落農地の空間特性把握について、どのように全体をとりまとめていくかが課題となっている。 集落の農地所有の空間分析についてはやや遅れているものの、逆に進んでいる越前市での分析手法を用いることで、対象集落である北中小路と出庭宅屋について、土地台帳データと土地等級分布図等を基に空間形成上の特質をスムーズに把握できるものと見込まれる。さらに、比較対象集落を増やして土地台帳調査を進めるかどうかについては、研究全体のまとめ方と関連させながら検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①土地等級による集落農地の空間特性把握:滋賀県旧栗太郡北東部地域の葉山村と大宝村エリアの面的調査をもとに、集落の共通する空間特性をとりまとめ、モデル的な空間パターンを明らかにする。まとめ方については、福井県越前市国高地区における地籍図と土地等級の調査を踏まえた空間分類の方法を活用する。なお、明治期における土地等級の設定について、地租改正過程の史料や滋賀県および福井県の地域史料を踏まえた上で、地域の比較分析を行う。 ②集落の農地所有の空間分析:越前市国高地区稲寄町をモデルとした分析手法を用い、同瓜生町を対象として、同様の分析・考察を行う。さらに、稲寄町、瓜生町とも明治中期の土地台帳データを用いて、明治期の集落の空間構成の実態を明らかにするとともに、昭和40年前後までの変化をみることで、土地所有と集落空間形成の関係性を明らかにする。また、近年の農地転用の実態とも関連付けながら、土地所有の空間的特性についてより詳細な分析を行う。 滋賀県旧栗太郡北東部地域については、北中小路と出庭宅屋を対象として、越前市での分析手法を用いることで、明治期と昭和40年前後の土地所有と農地の空間分布の特色を明らかにする。 ③比較分析による集落の空間形成上の特質把握:滋賀県と福井県の地域比較および、明治期と昭和40年前後、さらに今日という農地空間の歴史的変遷過程を比較してみることで、条里地割を踏襲する集落空間がどのように形づくられてきたのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
査読付き論文の投稿が予定どおり進まなかったため、論文投稿料を含むその他経費で繰越金が生じた。次年度は、本年度分も含め研究成果の発表に力を入れていく予定。
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Research Products
(1 results)