2019 Fiscal Year Research-status Report
A study on plant using construction design of traditional wooden houses through land use
Project/Area Number |
18K13904
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Research Institution | Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
青柳 由佳 名古屋女子大学, 家政学部, 准教授 (60713724)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 民家 / 木造建築構法 / 土地利用 / 植物資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
これからの循環型社会構築に向け、数年で成長することで循環利用可能な植物資源を建材の一部に利用することは今後ますます重要になると考えられる。本研究は現在求められる植物資源の循環利用が江戸時代から戦後頃まで各地域で行われていたという仮説に基づき、その仕組みを現存する伝統的な民家や土地利用を資料として明らかとすることを目的としている。研究対象地は、森林資源が豊富なため江戸時代において天領であり現代においても伝統的民家が多数残る飛騨、木曽地方と本州とは植生が異なり特徴的な民家が多数現存する奄美大島とする。 2019年度は奄美大島において2回の現地調査(9/8-13、12/23-27)を行った。奄美大島においては昨年度に調査した山間部の集落において、山間部の集落から島嶼部である与路島に移築された事例があるという証言が得られたため、与路島において現地調査を行った。与路島では伝統的な民家構法であるヒキムン民家2棟の実測調査を行い、この調査報告を2020年度の日本建築学会大会学術梗概にまとめた。与路島の大きな特徴は、内法に使われる大材であるヒキムン材にマツが使われていることである。主要部分を奄美大島の山間集落から移築し、ヒキムン材には地元のマツ材を使ったという事例も見られた。これまでの調査によると、奄美大島においてマツ材が使われる事例は珍しい。この背景を考察するため、当時の与路島の土地利用の資料となる1960(昭和35年)に再製された字絵図を奄美法務局より入手し地目ごとに整理をした。その結果、与路島は山が少なく原が多いことが明らかとなった。当時の与路島には二次林としてマツがあり、それらが建材の一部に利用されたものと推察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は飛騨・木曽地域での現地調査、奄美大島本島山間部での現地調査を行い民家の実測を行った。木曽地域ではサワラ材が特徴的な材であり、奄美山間部ではユス材が主要部分の建材に使用されており特徴的な材であることが明らかとなった。 2019年度は当初予定していた奄美大島の離島において伝統的な民家の実測調査を行うことができた。2018度調査を行った奄美大島の山間部でのヒキムン構法民家と山間部より移築されたと証言が得られた島嶼部でのヒキムン構法民家を比較をした結果、使用される材において相違点を確認することができた。また現地調査と並行に、民家が移築される背景について考察するため、それぞれの地域の資源を土地利用図を基に明らかにしたいと考え整理を行った。与路島では2棟の民家を実測できたが、この2棟が島における一般的な構法なのか、特殊な事例なのかを捉えるには至っていないため引き続き調査を行い実測棟数を増やしながら聞き取りにおいて補完したい。 当初の計画通り、飛騨、木曽、奄美大島(山間部、島嶼部)の現地調査を行い、それぞれにおいて民家の実測調査を実行でき、また並行に土地利用の資料を現地で入手できている。しかしながら、一部の地域では実測棟数が少ないため今後さらに補足調査を行い補完したいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本研究のまとめの年である。2018年に飛騨、木曽地域の現地調査を中心に行い、2019年度に奄美大島を中心に現地調査を行った。2020年度はそれぞれの地域において補足の現地調査を行い、実測棟数を増やす可能性を探りながら実測した民家を補完したい。さらに文献調査でそれぞれの地域の植生や土地利用を明らかにし、土地利用の結果としてどのような資源を民家に利用し、どのような技術を成立させたかを明らかにできると考えている。各地域の調査によって明らかにし考察したことを「土地利用に基づく地域の民家構法デザイン」として小冊子にまとめる予定である。さらに学術論文へ投稿予定である。 しかしながら現在コロナウイルスの影響により現地調査が難しい状況であるため、計画の変更が必要となる可能性がある。文献調査をまとめ考察を深めつつ、小冊子作成の準備や論文投稿への準備をしながらウイルスの終息を待ち現地調査を再開したいと考えている。
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