2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of land supply and continuity of community in "100-year kampungs"
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18K13907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 憲吾 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (60548288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カンポン / 土地所有 / ブタウィ・ハウス / コミュニティ / 移築 / 花卉市場 / ジャカルタ / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドネシア・ジャカルタの戦後史において、オランダ植民地から継続する歴史的カンポン(<百年カンポン>と呼称)が、独立以後の人口流入に対して、どのような仕組みで土地を供給したのか、さらには、その過程で、植民地期のブタウィ人コミュニティがどの程度継承しえたのか、について明らかにすることを目的としている。本年度(2019年度)は、西ジャカルタ市・北スカブミ区・ラワベロンにて、土地所有の動態把握と花卉市場の成立過程の2点について、インドネシア大学と共同調査を行い、地域住民への成果報告会を実施した。 土地所有の動態把握については、昨年UAVを用いて作成した調査地区の航空写真をもとに、現在の敷地割を特定し、各世帯に対して①土地所有の形態、②居住の経緯に関してインタビュー調査を行った。また、ブタウィの長老や自治会長らに対して地域コミュニティに関するインタビュー調査を追加で実施した。その結果、植民地期から当該地区に居住する複数のブタウィ世帯を特定し、彼らの敷地が親族あるいは新規流入者に分割・供給されていく過程を地図化できた。新規流入者の中には、開発のために以前居住していたカンポンからの移住を余儀なくされたものもあり、低密であったカンポンが都心開発のバッファとして高密化する過程が理解できた。また、そうした高密化には、70年代からのカンポン改善計画(KIP)による地区内主要道路のアスファルト化が一つの契機であることが明らかとなった。 花卉市場の調査では、植民地期は各世帯の敷地における生産が中心であった当該地域が、高密化に伴い、域外からの仕入れと市場での販売を中心とする地域に次第に性格を変えること、さらに一部の生産者はハイエンドな品種の生産に特化して成長したことが明らかとなった。都市化に取り残された島としてのカンポンではなく、生業を都市化に適応させていく動的なカンポンの姿が把握された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定どおり、2019年8月にインドネシア大学とともに、カンポンの土地所有形態に関する詳細調査に着手することができた。当該地域の住民を集めた成果発表会では、区長も出席し、今後の調査に関して協力体制を築くこともできた。 しかし、年度末に行う予定であった追加の調査は新型コロナウィルスの影響で実施することができず、さらに2020年度の調査再開の目処が立っていない。そのため、当初の計画に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
土地所有形態に関する実地調査から、既存のブタウィの住人が土地を分割・供給する際に、親族に対しては非公式な土地所有権であるgirikのまま継承する傾向があるのに対して、血縁関係のない新規流入者には、土地の所有権が含まれない建物使用権(hak guna bangunan)で取引する事例が多くみられた。このような土地権利の転換方法の戦略的違いについて分析を進める。さらに、カンポンの高密化の契機となったカンポン改善計画について、従来の研究では住民参加型のプロジェクトと認識されているが、実際は住民の関与がほとんどなく、調査地では住民たちの自発的な道路建設が別途行われていることが明らかとなった。こうした公式な改善計画以外のインフラ整備がカンポンの都市化に果たした役割を追加で調査する。 都市化に伴う花卉市場やカンポン内の花卉生産の性質の変化について詳細に調査を行う。現在の市場の性格は、一般消費者向けの小売りではなく、冠婚葬祭用の装飾ボード製作を行う小規模事業者向けの販売が主になっている。花卉冠婚葬祭用の装飾ボード文化の成立と合わせて、当該地域における主要な生業の歴史的変化に関する史料を調査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で予定していた2回目の実地調査が実施できなくなったことが大きな要因である。その影響は現在もまだ継続しているため見通しが立たないが、渡航可能な状況になったら実地調査を再開する。
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Research Products
(6 results)