2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of land supply and continuity of community in "100-year kampungs"
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18K13907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 憲吾 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60548288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カンポン / 土地所有 / ブタウィ・ハウス / コミュニティ / インフォーマル / 花卉市場 / ジャカルタ / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2020年度)は、新型コロナウィルスの影響でインドネシアへの渡航が全くできなかった。そのため現地調査を断念し、これまでの調査で取得していたデータの分析と成果の取りまとめに専念した。 2018年度におこなったジャカルタ全域を対象にしたマクロ分析については、居住環境の分類手法とジャカルタへの適用、百年カンポンの残存割合に関して英語論文にまとめた。 一方、2019年度に西ジャカルタ市・北スカブミ区・ラワベロンで実施した土地取得方法や居住歴に関する住民へのインタビュー調査については、データを解析して土地分割プロセスの復元を試みた。サンプリングの結果からは、当該地域のおよそ半分の世帯が1970年以降の新規流入世帯と推定された。しかし同時に、地元のブタウィ世帯が遺産分割をおこない、住戸密度を増やすケースが相当数存在していた。同一敷地内に血縁者が近接して住戸を建設するケースである。これらの敷地を、土地局が公開する地図と照合すると、未登録とされる土地と高い確率で一致することがわかった。すなわち、土地局に登記されていない土地には、不法占拠ももちろん存在するが、少なくとも百年カンポンについては、血縁者間で土地相続をおこなった箇所が数多く含まれることが判明した。 一方、新規流入者との土地交換では、1990年代後半以降は、正規の土地権利の下に売買をおこなっているケースが一般的だとわかった。しかしそれ以前は、売買証書のみや、オランダ時代に発行された土地権利書、コミュニティによる慣習的私有権などで、公的な登記なしに土地売買をおこなっているケースが大半であることも、今回の調査から明らかになった。ただし、1996年の政府の土地権利正規化プログラムの結果、現状ではほとんどの土地が登記されている現状が明らかになった。これらの成果はインドネシアでの国際会議(オンライン開催)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
土地分割のプロセスに関しておおよその復元は可能になったが、詳細を明らかにするには補足調査が不可欠である。当初の予定では、本年度に現地で補足調査を進める予定であった。また、ラワベロンの調査結果の普遍性を検証するために、他の百年カンポンでも比較調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスにより現地調査の実施できず、今後もその目処がたっていない。当初の計画に対して大幅に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度ならびに今年度の分析から明らかになった以下の点について、さらなる検証を進める。 ①ブタウィの住人が土地を分割・供給する際に、親族には、非公式な土地所有権であるgirikのまま継承する傾向があるのに対して、血縁関係にない新規流入者には、公的な土地権利のひとつ建物使用権(hak guna bangunan)で取引する事例がいくつかみられたが、一定の傾向をそこに認めることができるか否か。 ②土地局の未登録地が、地元住民の血縁的関係によって土地分割された土地であることの検証。他のカンポンで調査をおこなうことによって、百年カンポンの土地分割プロセスの一般法則の有無を明らかにする。 ③新規移住者の流入要因をプッシュとプルの両面から解明する。プッシュ要因としては都心部の開発による強制移住が聞き取り調査からあげられるが古地図や新聞記事など歴史資料を用いた検証をおこなう。プル要因にはカンポン改善計画ならびに、住民の自主的なインフラ整備があげられるが、それらの公的な記録を用いた検証をおこなう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で予定していた現地調査ができなくなったことが大きな要因である。その影響は現在もまだ継続しているため見通しが立たないが、渡航可能な状況になったら実地調査を再開する。
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Research Products
(4 results)