2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の木造建築における「洗い」と「色付」の比較研究
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18K13910
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中山 利恵 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (30770185)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 洗い / 色付け / 樹種 / 木取り |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引き続き、現在までの木肌処理技術研究の追加調査を行いながら、それらを一旦総括する作業と、色付けを中心とした新たな調査を並行して行った。 前者の作業としては、博士論文提出時には発行されていなかった近畿地方の国宝・重要文化財の修理工事報告書等を調査し、江戸時代前半から末期までの洗いの記録を新たに見出した。特に、天保七年(1836)の知恩院集會堂『知恩院諸堂社其外修覆諸色代銀請取帳』において、「灰汁湯洗」「拭洗」「拭いふき」という3種の仕様が施工部位によって使い分けられ、「灰汁湯洗」を二段階に分けた四段階の坪単価も明記されていた。洗いが修理普請等で独立した職種として一般化するとともに、その仕様が確立され、一定規模の修理工事に異なる種別の洗いが坪単価と共に明示されるに至る経緯を明らかにした。これらの成果は、日本建築学会計画系論文集 6月号に掲載が決定している。 後者としては、石川県金沢市の卯辰山麓伝統的建造物群保存地区を対象に、町家建築における色付けの傾向を、町家形式、建築年代、外観化粧木部の木取り、樹種という5つの側面から調査した。現存する「高町家」と呼ばれる形式が多く建設された昭和期の町家に、色付けの痕跡は見られず、昭和期には、ほとんど色付けが行われていないことが明らかになった。一方、調査件数が最も多いにもかかわらず、他の時代に比べて色付町家の割合が高くなっている明治期に、最も盛んに色付けが行われていた可能性が指摘できた。また、町家の当初材と思われる外観駆体部材の木取りが板目か柾目かを調査し、外観躯体部材に板目材を使用している町家の方に色付けの痕跡が集中していること等を明らかにした。これらの成果は、2021年度日本建築学会大会(東海)学術講演会に梗概を提出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍ではあったが、金沢市歴史都市推進課のご協力を得て、緊急事態宣言期間を避けながら学生と金沢でのフィールドワークを実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍により今後の表層処理技術の実態・遺構調査の実施の可能性は不透明ではあるが、これまでの調査の分析や史料文献調査等を中心に行い、論文執筆を進める。また、状況が落ち着き次第金沢や京都などでの実態・遺構調査を順次進められるよう検討していく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスや本学での教育・建築実施業務などにより、年度末に想定していた調査が行えなかったため、特に旅費が使用しきれなかった。
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Research Products
(2 results)