2022 Fiscal Year Research-status Report
日本の木造建築における「洗い」と「色付」の比較研究
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18K13910
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
中山 利恵 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (30770185)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 洗い / 洗清 / 色付け / 樹種 / 経年美 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も引き続き、現在までの木肌処理技術の研究を深めつつ一旦総括する作業を行った。江戸幕府の作事方大棟梁を世襲した甲良家に伝わる本途帳における、木肌処理技術に関連する事項の翻刻と分析作業を行った。本途帳とは、幕府が行う建築工事見積を行うための建築標準仕様書兼単価表のようなものである。このうち、「洗方検地」の項目には天井・小壁・羽目(板)屋根裏・榑縁・竹縁・建具等の単価が書かれていた。またここでは人足は「小使」「小供」等で計上されていた。また、「小買もの」の項目には洗いや色付けに使用されたと推察される道具類が記入されていた。「色付もの入用」と明記されていたものは「煤玉」「にゐし(丹石)」「剥胡桃」「とのこ」「木絨」があった。「洗方入用」と明記されていたものには「切たわし」「雑巾布」「荷内桶」「手桶」「柄杓」等があった。さらに「清そうじ入用」として「しゆろ箒」「もろこし箒」等の箒類が見られる他、「馬連 但しゆろたわし事也」が「洗方入用」とされていた。これは、馬連の原料として使用されていた棕櫚の皮を用いた束子を指しているものと考えらる。 また、数年前より行っていた伊賀上野愛染院芭蕉翁故郷塚「瓢竹庵」の調査研究において、松本氏・田鶴氏と共に成果論文をまとめ、建築学会計画系論文集に掲載された。 さらに昨年度発見した引札の年代が地名から推測できたこと、同じ名前を襲名したと考えられる洗い屋が京都の近代にも存在していたらしいこと等の発見があった。これらの成果は、2023年度 研究成果公開促進費(学術図書)を頂き、次年度中に書籍として発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ過や学内業務等の多忙により、遠方への移動を伴う調査や謝金を伴う学生同伴の調査などが遅れているが、史料調査においては一定の成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで得られた木肌処理技術研究を総括するため史料調査を進めつつ書籍化の作業を進めるとともに、必要に応じて色付けと洗いに関する修理工事現場などの調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ過により遠方への移動を伴う調査や謝金を伴う学生同伴の調査などを避けたためによる。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 和樂庵再生-拡張する歴史的建造物2022
Author(s)
中山利恵, 清水重敦, 和田蕗, バルナ・ゲルゲイ・ペーター
Total Pages
33
Publisher
KYOTO Design Lab, Kyoto Institute of Technology
ISBN
978-4-910743-55-4