2019 Fiscal Year Research-status Report
初期近代ローマの新サン・ピエトロ聖堂造営における建築創作手法としての創造的修整
Project/Area Number |
18K13911
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Research Institution | Kyoto University of Arts and Crafts |
Principal Investigator |
岡北 一孝 京都美術工芸大学, 工芸学部, 講師 (00781080)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ルネサンス建築 / アルベルティ / サン・ピエトロ聖堂 / ローマ / 初期近代 / 再利用 / スポリア |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年4月1日付で所属研究機関が変わり、新しい研究環境でのスタートとなった。2019年度は、共著書が一冊刊行され(『世界都市史事典』、昭和堂、2019)、研究論文が一つ(「ルネサンス概念の生成:ヴァサーリからペイターまで 」)公表され、口頭発表を2つ行った(「ルネサンス概念の生成:ヴァサーリからペイターまで 」および「初期近代のサン・ピエトロ聖堂の再建と建築の「生」と「死」」)。 『世界都市史事典』では本研究で得られた成果を盛り込んで、ローマ、アッシジ、フィレンツェ、フェラーラ、マントヴァの5都市について、それぞれのルネサンス期の様相を中心にその都市史を描いた。 また「ルネサンス概念の生成」では、19世紀のヨーロッパにおけるルネサンス観を整理し、それらのルネサンスの見方では、15世紀と16世紀への眼差しに大きな違いがあること指摘した。16世紀を絶頂期とし、その時代にルネサンス文化を代表させるのか、あるいは15世紀こそがルネサンス的なるものの顕れであると考えるのか、決して一様ではないルネサンスが描かれてきた。それは15世紀から16世紀にかけてのサン・ピエトロ聖堂の再建を見る上でも、有用な視点となりうると考えている。 「初期近代のサン・ピエトロ聖堂の再建と建築の「生」と「死」」では、サン・ピエトロ聖堂の造営事業において、3世紀にわたって新聖堂を建設することは、旧聖堂をどう弔うかでもあったことを指摘した。キリスト教において、イエスの死と復活は教義と信仰の核をなすように、聖なるモニュメントもまた、象徴的に一度死んで復活することが重要であったことを述べた。 なお、本年度はローマでの在外研究を2月18日から2月25日にかけて行ったが、COVID-19の影響により、計画通りにはいかなかった。現地での資料収集や建築観察・分析については、2020年度に改めて機会を設けて行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで研究を進めてきた『記憶に残すべきローマの古代のサン・ピエトロ聖堂について』(マッフェオ・ヴェジオ、1455年頃)については、2019年に英語訳とそれに関する論考をまとめた著作が出版された(Eyewitness to Old St Peter's Maffeo Vegio's ‘Remembering the Ancient History of St Peter's Basilica in Rome,' with Translation and a Digital Reconstruction of the Church, 2019)。これにより、研究の進展のスピードが増したが、本研究の方向性とも似た点が多いため、それを思う存分活用しながら、別のテクスト(アルファラノなど)に注力することで独自性を強調したい。また、2020年度もCOVID-19の影響により、イタリアでの調査・研究に支障が出ることが十分に考えられるため、適宜日本でも進められる研究計画へと変更していく予定である。また今後も研究協力者である4名の研究者に協力を仰ぎながら進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年4月に『リノベーションからみる西洋建築史』(彰国社)が出版され、リノベーション、つまり既存建築の保存や修復、改修活用の観点から建築史を捉えようとする動きが活発化してきている。本書籍ではルネサンスだけにとどまらず、古代から19世紀までのさまざまな事例を各研究者が掘り下げて論じているため、ここでの研究者交流や知見の共有を本研究にも生かし、新聖堂建設における旧聖堂の継承と保存の問題のさらなる解明を目指したい。なお、昨今の情勢からイタリアでの現地調査が計画通りに進まないことを想定し、建築、絵画の対象を少し削減し、よりテクスト重視の研究計画へと変更する予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、イタリアへの出張が予定よりも短縮され、旅費として計画していた金額が大幅に変更になったため、次年度使用額が生じた。2020年度は状況を鑑みて、文献史料を重視した研究へと修正する予定であるので、その分、資料・書籍代に多くを充てる予定である。
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Research Products
(6 results)