2018 Fiscal Year Research-status Report
昭和初期における歴史的建造物保存修理の構造補強体系の構築
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18K13918
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
前川 歩 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (60711984)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 建築史 / 文化財保護 / 保存修理 / 構造工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、歴史的建造物の保存修理において、その根幹をなす「構造補強」という行為を再考するための新たな枠組みを構築することを目的とする。その手立てとして、構造エンジニアが修理工事に介入を始めた昭和初期の工事修理に注目し、実際の構造補強工事の分析を通じて、近代的な構造工学に基づく思想・技術の受容過程とその構造的特質の解明をめざす。 初年度となる2018年度は、基礎資料の収集と分析を主に進めた。具体的には、川崎市立日本民家園大岡實文庫および東京都公文書館内田祥三文庫において、戦前期の法隆寺国宝保存工事関連資料を収集した。特に金堂保存修理工事における構造工学分野の受容過程、実施された構造的検討の資料を収集し、その検討項目のデータベースを作成した。こうした作業により、構造項目導入の検討過程、導入主体、具体的な実験内容が明らかになった。こうした項目が、実際に修理工事内容においてどのように反映されていくのかについて、2019年度以降注視していく予定である。 また、戦前期に行われた歴史的建造物保存修理工事のうち28件の修理工事報告書から、構造補強項目を抽出し、データベースの作成を開始した。2019年度も継続して戦前期の修理工事報告書(残23冊)よりデータベース作成をおこなう予定である。 いっぽう、当初予定していた、京都大学所蔵の坂静雄、棚橋諒関連資料調査については、先方に確認したところまとまった資料が残っておらず、これに代わる資料調査を現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述したように、当初予定していた京都大学所蔵資料の調査が実施できなかったため、必要資料の収集に若干の遅れが生じている。また、データベース作成に際し研究アシスタントを雇うことができなかったため入力作業においても若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度実施できなかった資料調査に代わり、奈良県所蔵資料の調査を本年度予定しており、必要資料が入手できると考えている。また、本年度は研究アシスタントを雇える見通しがついており、データベース作成作業は順調に進められると考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた資料調査および研究アシスタントの雇用が実施できなかったため。また、必要物品についても購入する金額に満たず、また早急に購入する必要性も薄いため、合わせて次年度の予算に繰り越した。
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