2019 Fiscal Year Research-status Report
Damage evaluation of heat-resistant composites for aircraft engines at elevated temperature using novel fiber-optic sensor-based AE detection method
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18K13920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
于 豊銘 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (50814307)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高温環境 / 光ファイバセンサ / 再生FBG / アコースティックエミッション / ガイド波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光ファイバセンサを用いたアコースティック・エミッション(AE)技術に基づき、耐熱材料の高温環境下での損傷進展を評価可能なIn-situ非破壊検査(NDT)手法と、苛酷環境下で適用可能な構造物の健全性モニタリング(SHM)技術を構築することを目標としている。これらの目標を目指し、2019年度は主に下記の2点の課題に取り組んだ。 課題1 高温環境におけるラム波モードの伝播挙動の観察:初年度は、レーザ照射により励起した超音波の波形変化から、ラム波モードへの温度変化の影響を明らかにした。今年度は、より明確なモード観察を行うため、試験片の表面上でレーザ照射点を走査させながら、各位置で励起された超音波を、光ファイバ超音波ウェーブガイドに基づく遠隔超音波計測法により受信し、収集した波形データを処理することで、高温での超音波の伝播挙動を可視化する手法を構築した。これにより、300℃から1000℃までの温度範囲で、AE波形の低周波数領域での主要なモードであるS0モードとA0モードが、セラミックス平板試験片を伝播する挙動を観察可能にした。 課題2 単独センサによるAE発信源位置評定法の構築:本研究で提案した、光ファイバPSFBGセンサを用いた遠隔AE計測法が、複合材料の負荷試験中に発生した損傷の形態同定に適用できることを、既に検証している。高温環境でのAE計測による損傷評価においては、損傷形態に加え、損傷の発生位置を同定することも重要である。そこで2019年度は、遠隔AE計測に適した新規の損傷位置同定手法を構築した。一般的な、AE波の到達時間差による損傷位置評定法では、2個以上のAEセンサが必要となる。これに対して、新規手法では、1つのAE波形に含まれるS0とA0の2モードの到達時間差から位置を推定するため、単独のPSFBGセンサでもAE発信源の位置を推定することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光ファイバ超音波センサによる高温用NDT手法とSHM技術を構築するという目的を達成するため、申請時に次の3つの課題を計画した:【A】遠隔AE計測法による高温環境下でのラム波伝播特性の解明;【B】遠隔AE計測法を用いた高温環境下での材料中の内部損傷評価法の構築;【C】高温RFBG超音波センサを用いたSHMシステムの構築。 2019年度までに、1000℃の高温環境における超音波伝播挙動を解明可能な、波形分析手法と超音波可視化手法を構築できた。それらの手法により解明できたラム波モードの伝播挙動は、AE計測による損傷形態の同定や損傷位置評定に十分に役に立つため、課題【A】はほぼ達成されていると考えられる。 また、2019年度は、課題【B】で提案した高温環境下でのAE計測による損傷評価に必要な、損傷発生位置の新規同定法を確立した。これは、1個のセンサだけで同定可能な方法であるため、使用するセンサの数を最小限にでき、より実用性に優れたAE計測法の構築が期待できる。既に確立している損傷形態の同定法も加えると、【B】で設定した目標はほぼ達成しており、CMCや耐熱CFRP積層板の高温材料試験における本手法の有効性の検証が、今後の課題として残っている。 そして、2018年度には、PSFBGに対してアニーリングを行うことで形成したR(PS)FBGは、1000℃の高温環境でも、広帯域にわたる超音波を高感度で計測でき、通常のRFBGより超音波受信性能に優れることを証明できている。さらに、R(PS)FBGは多重化可能であり、高温用の超音波多点計測SHMシステムの構築に適する。この技術は新規性と進歩性に優れているため、2019年度は所属研究室にて特許出願を行った。よって、【C】の目標も達成しつつあると考えている。 以上の通り、申請当時に設定した目標の達成に近づきつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、申請時に設定した、高温でのラム波モード挙動の解明(課題【A】)と、高性能な耐熱RFBG超音波センサの構築(課題【C】)の2課題は、ほぼ達成できている。そして、課題【B】での、AE計測に基づく損傷評価のための、損傷の形態同定と位置同定に関する基礎研究は完了したが、今後、その評価手法の実用性と信頼性を検証する必要がある。そこで、最終年度となる2020年度では、損傷評価法の性能評価に重点をおいて、研究を進める予定である。 研究を推進するにあたって、まず、入手可能な耐熱性複合材料を調達する。そして、その材料試験片に対し、高温環境中で三点曲げ試験などの負荷試験を実施しながら、損傷発生に伴って励起されるAE信号のリアルタイム計測を試みる。その後、収集したAE信号データに対して解析を行い、発生した各損傷の形態と位置を同定する。さらに、試験中に取得した荷重曲線と、試験後の試験片の断面観察に基づいて、高温環境でのAE計測に基づく損傷形態と発生位置の同定結果の信頼性を評価する。さらには、様々な温度条件で上記の試験を実施することによって、温度変化が損傷の発生と進展にどのように影響するのかについても、調べていく。その際、課題【A】で得られた知見である、ラム波モードへの温度変化の影響も考慮することで、より正確な損傷評価を試みる。 実験には、所属機関で所有している装置を使用する予定であるが、もし、希望の実験条件に満たない場合には、外部の機関の高温炉付き材料試験機を借りて実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度に購入する予定であった高温実験用の装置は、実験の条件を満たさないことが判明したため、所属機関の試作工場に実験用設備等の作製を依頼することに計画を変更した。そのため、実験用の装置等が、予定より安価に抑えられたので、2019年度予算の残額を2020年度に繰り越して使用することにした。 繰り越した研究費は、2020年度に実施する予定の高温実験における供試体の購入や実験設備のレンタルに使用する予定である。さらに余裕が生じれば、2019年度に出願した特許の審査費用の一部に充当することを考えている。
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Research Products
(3 results)