2019 Fiscal Year Annual Research Report
Controlling Hall thruster discharge instabilities by C60 negative ions
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18K13932
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
張 科寅 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (40710596)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気推進機 / ホールスラスタ / 負イオン / 電子乱流 / 宇宙推進 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気推進のひとつであるホールスラスタは、そのロバスト性や推進性能・耐久性から、衛星の主推進系を担うようになってきており、宇宙運用が本格化している。研究開発が各国で加速する中、残る課題は、高電力密度作動が実現できない、ということである。その原因は、高電力密度化すると、原理的に強磁場による電流阻害が生じ、電子乱流が激化し、結果エネルギー損失やスラスタ損耗が急増するからである。これは従来ホールスラスタの設計最適化では解決困難と考えられ、これまでと角度を変えたアプローチが必要である。本研究では、C60負イオンを磁場に影響されない電流媒体として新たに導入することで、課題解決を提案した。 本研究では、公開情報の範囲内では前例がないと思われる、C60を導入したホールスラスタの放電実験を行った。実験では、従来のXe推進剤で放電させることでスラスタを昇温し、C60を昇華させることでXe/C60混合推進剤による放電を実施した。C60導入により放電モードが明確に変化し、作動条件によっては逆に放電が大きく不安定化した。原因分析としてPIC粒子法によるシミュレーション評価から、プラズマ中の負イオン比率が一定割合以上になると、電子が不足することでプラズマ生成が減少し、プラズマ密度を安定に維持できないことがわかった。よって、C60負イオンを有効活用するためには、負イオン比率を一定以下に抑えるべく、当初の目的通り高電力密度作動が必要であることがわかった。ただし検討の結果、当面利用できる試験設備では必要となる密度での実験実証が困難であったことから、現状シミュレーションによる示唆に留まる。結論として、前例がないC60を導入したホールスラスタの放電実験を行ったこと、実験と数値解析により、ホールスラスタにおいて負イオンを有効活用するための指針を一定レベルで得たこと、が本研究の成果である。
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