2019 Fiscal Year Research-status Report
日本南岸流速極値推定のための高解像度海洋ダウンスケーリング
Project/Area Number |
18K13933
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小平 翼 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (60795459)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 海洋数値モデル / 黒潮 / 潮汐 / 日本南岸 / ダウンスケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は本研究「日本南岸流速極値推定のための高解像度海洋ダウンスケーリング」を実施するために必要な数値モデルの構築を平成30年度に続いて実施した。試験領域は、黒潮と潮流の双方の流れが重要であり、かつ伊豆諸島に点在する潮位計によって数値モデルの検証が可能である伊豆 海嶺上海域を選択した。試験結果の検証として海面水温を高解像度ひまわり8号の衛星観測と比較する上で、伊豆海嶺上では黒潮が非大蛇行流路を取る際に潮汐流と島の存在によって冷水が比較的広い範囲に分布されることを発見した。この結果については雑誌論文として出版された。 潮汐が領域モデル結果に大きく影響することが確認されたことを受けて、領域モデルにおける潮汐の再現性を向上させる方法について検討した。一般的に領域モデルでは境界条件に順圧潮汐による圧力あるいは流速を設定することで潮汐の再現を試みるが、再現結果は沿岸地形に依存することが知られている。そこで、境界条件に加えてモデル内部において潮汐成分のみを修正するスペクトラルナッジングという手法の適用を試みた。なお、適用の効果を広く検証する為、領域モデルではなく、別途研究代表者が過去に扱った海洋数値モデルNEMOを用いた全球モデルを用いた。モデル結果を沿岸潮位計と比較した結果、確かにスペクトラルナッジングにより誤差は低減するが、境界条件を与えない全球モデルの場合であり、領域モデルに適用したとしても、効果は見込まれるが、限定的であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高解像データセットを構築するのに必要不可欠な領域海洋数値モデルを予定通り構築できている。研究環境としても東京大学情報基盤センターが所有するメニーコア型大規模スーパーコンピュータシステムOakforest-PACSを用いた大規模計算環境ならびに50TB程度のストレージを確保しており、数値実験実施の準備ができている。また、当初計画では明確に予想していなかった新たな知見を発見し、その内容の雑誌論文での公表も行うことができた。一方、当初の計画から変更される点として、活用する海洋モデルプロダクトの変更があげられる。今後の研究の推進方策でも詳述する通り、日本南岸を対象とした海洋数値モデルプロダクトはこれまで水平10km程度の解像度が主であったが、水平数km程度の解像度での計算結果が研究集会では報告されて初めており、当研究でもこれらを活用することで、より当初の目的達成に近くと考えられる。これらは当初の計画では含まれていないが、研究の趣旨を考えた場合に実施すべき項目である。その為、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は研究目的である日本南岸流速極値推定により着目して研究を進める。これまで、ダウンスケールを実施する際の初期値・境界値として活用する海洋モデルプロダクトは日本南岸を対象とした水平10km程度の空間解像度、1日程度の時間解像度が主であったが、データ同化を含む水平数km程度の解像度での計算結果が研究集会では報告されて始めている。そこで、これらの最新のデータを用いて、モデルによる流速推定の差異、そしてダウンスケーリングの効果を定量的に示していく。対象海域はこれまで数値実験を行なってきた伊豆諸島海域を主とするが、本研究に活用できる現場観測データを吟味して変更することも選択肢とする。
|
Causes of Carryover |
本研究の目的は日本南岸流速極値推定に必要な知見を得ることである。実施事項のひとつに長期高解像ダウンスケーリング実験があるが、実施に必要なデータが2019年9月に更新され、より精度の高い実験が可能となった。一方、数値計算に利用するスーパーコンピュータがシステム更新を伴い、実験準備により多くの時間が必要となった。そのため、研究延長申請を行い、次年度使用額が生じることとなった。
|
Research Products
(4 results)