2019 Fiscal Year Research-status Report
光計測技術を複合的に用いた海底その場粒子化学イメージング手法の開発
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18K13934
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 朋子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭技術開発プログラム), ポストドクトラル研究員 (20806301)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海中粒子測定 / マイクロプラスチック / レーザー分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度(1年目)で、コヒーレント反ストークスラマン散乱(coherent anti-Stokes Raman scattering; CARS)のみを使って迅速な粒子計測が実現可能なことが分かった。2019年度(2年目)は、2種類のCARSセットアップを用い計測実験を進めるとともに、プラスチック以外の粒子の測定、得られた画像から粒子の組成・特徴・数のカウントの解析方法を詳細に検討した。2年目もイギリス・サウサンプトン大学のSumeet Mahajan教授のもとで、客員研究員として数か月現地に滞在しCARSの実験を行った。 多波長の高速測定が可能なCARSセットアップでの測定では、極小の領域に存在する粒子にのみ可能なことがわかり、現行のセットアップでは測定速度が限定されてしまうことがわかった。本研究で目指すのは迅速な分析のため、測定に使用する装置は1年目より用いていたハイパワー波長可変システムに絞ることとした。そして、本セットアップで用いる流路の材質を工夫し、1年目よりもさらに高速な流れ(4mm/s)で粒子を計測することができたうえ、蛍光の同時観測を加え、CARS光と蛍光の同時観測を行うことで、プラスチックと有機物質の高速分類に成功した。また、1年目で実現した高速流れ内の粒子を正確に計測・分類するため、ラインスキャンによるCARS画像を解析して、検出した粒子のカウント、各々の粒径、粒子速度を計算することに成功した。 本年度で手法・セットアップの最適化が進み、 最終年度である3年目で、深海での浮遊粒子とマイクロプラスチックを深海その場でイメージング計測するための手法としてまとめることが十分できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では、1.2つのCARSセットアップでの検討、2.信頼性の高い粒子計測のため粒子の流れを制御する流路の設計、3.有機粒子・マイクロプラスチックの流路内での安定的な計測・分類を達成目標とした。 1.では、「研究実績の概要」に示したようにハイパワー波長可変システムが適することがわかった。2.では、「今後の研究推進方策」で詳しく示すように、検出方法の工夫により、粒子の流れや濃度を制御しなくても流路内の粒子の大部分を計測できる見込みがあることがわかった。この手法は粒子計測で例を見ない新しい計測方法の提案になると期待でき、3年目で実装実験を行う。3.では、CARS信号と蛍光を同時観測することで、有機粒子とマイクロプラスチックの高速分類に成功した。よって、予想と異なった部分に対しても別のアプローチによって目標をほぼ達成しているため、おおむね計画通りに順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目では、当初粒子濃縮機構の製作・実装を検討していたが、これまでの研究により、ラインスキャニングに深さ方向のスキャニングを同期させビデオ画像も同期して取得することで、濃縮せずとも流路内に広がる様々な大きさの粒子を高速流れの中で測定できる可能性がわかった。この方法では、従来方法のほとんどで用いられている、測定領域への物理的な粒子トラップの必要がなく、画期的である。よって、3年目で本手法を実装し、さらに得られたCARS画像と光学画像から、粒子数(濃度)と粒子の詳しい特徴(性質、形状、サイズ、速度)を機械学習的に解析する方法を検討して、高速流れの中の様々なサイズ・タイプの粒子を精度高く分類する方法を確立する。また、本研究をまとめた論文を2稿(手法に関する論文と、実際に海に存在する形態での測定結果に関する論文)投稿する。
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Causes of Carryover |
研究目的には変更がないが、手法としてレーザー誘起破壊検出法(laser induced breakdown detection; LIBD)とCARSの複合利用ではなくCARSのみで目的遂行できることがわかり、セットアップの変更とそれに伴う物品購入時期が変更したため、次年度の科研費使用が生じている。研究実績の概要に記した通り、異なる2つのCARSセットアップを使用して行った実験で、ハイパワー波長可変システムで提案手法が有効であることがわかった。当初CARSでもLIBDでも使用できる目的のためにCARSにはローエンドモデルのレーザーを購入する予定であったが、実験を通し、購入予定のレーザーでは十分な結果を得られない可能性があることがわかった。それよりも、光学画像とCARS画像を同期取得することで流路内に広がる粒子の大部分を計測できることが見込めるため、本年度は光学画像用の光源としてのレーザーを購入した(他プロジェクトにも使用することができるために合算での購入)。よって本年度は当初予定していた物品購入費よりも少額になったが、代わりに光学画像を取得するためのカメラの購入を次年度に行い、光学画像とCARS画像の取得ができるセットアップを製作する。
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Research Products
(1 results)