2020 Fiscal Year Research-status Report
衝突事故において船舶に刻まれた傷の形状等から衝突状況を推定する手法に関する研究
Project/Area Number |
18K13947
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Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
中山 喜之 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 准教授 (70747013)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 船舶衝突 / 衝突角 / 衝突模型実験 / 画像解析 / 海上保安庁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、船舶衝突事故において船舶に刻まれた傷の形状・角度等から、衝突時の状況を推定する手法を確立することである。2020年度は補助事業期間の3年目に当たり、前年度までの実績を踏まえつつ、以下の事項について研究を進めた。 まず、前年度までに実施した模型船による衝突基礎実験の結果および海上保安庁から入手した過去の船舶衝突海難事故に関するデータの両方について、その衝突時の傷を中心に比較・検証することにより、現段階における「衝突時に船舶に刻まれる傷の状況とそれに対応する船舶の挙動との関係」に関するある種の法則性について把握・整理した。また、模型実験の結果を中心とした現段階までの成果について論文として取りまとめ、海上保安大学校研究報告(理工学系)に投稿し、査読の後、受理された(2021年3月発刊)。 一方、新型コロナウィルスの影響により、2020年度に予定していた模型実験に関する外部研究者等との打ち合わせ、実験の実施自体が困難となったため、上記法則性に関する検証実験については予定通り実施できていないというのが現状である。よって、計画していた国内外における学会発表についても延期せざるを得なくなったことから、学会等での成果報告については2021年度以降に行うことを予定している。 なお、引き続きコロナ禍の状況ではあるが、模型船による検証実験の準備については、可能な部分から実施しているところであり、状況が整えば、すぐにでも実験を実施する予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも記載したが、新型コロナウィルスの影響により、2020年度については、一定期間、出勤の制限(在宅勤務等)、出張(県をまたぐ移動等)の制限、集団での活動(実験の実施等)の自粛などの措置が取られたことから、予定していた通りの研究の実施は困難であった。研究代表者が所属する研究機関は国の機関である海上保安庁に属していることから、新型コロナウィルスへの対応については、国民の利益を守るため、厳格に実施してきたところである。このため、計画していた模型実験の実施、それを踏まえた学会等での成果発表ができておらず、研究はやや遅れている状況となっている(どちらかといえば「遅れている」に近い状況となっている)。 この遅れについては、2021年度に研究活動を再開・加速させることで対応する予定であるが、新型コロナウィルスの影響は依然収束する気配が見えないため、補助事業期間を延長することも視野に入れつつ、研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の最終年度となる2021年度においては、2020年度に実施できなかった「衝突時に船舶に刻まれる傷の状況とそれに対応する船舶の挙動との関係」に関する法則性について検証するための衝突模型実験を実施する。その後、その結果を踏まえて、法則性を再構築または追加の検証実験を実施する等により研究を進展させ、本研究の最終目的である「船舶衝突事故において船舶に刻まれた傷の形状・角度等から衝突時の状況を推定する手法」の確立を目指す。 研究成果については、日本航海学会または日本法科学技術学会(衝突事故鑑定を研究分野として含む学会)にて発表する予定であり、併せて、新型コロナウィルスの状況が許せば、ISOPE、OMAE等の海事分野にかかる国際学会においても発表することを計画している。 なお、2021年度においても、新型コロナウィルスの影響等により、予定通り研究を進捗させることができない場合については、補助事業期間を延長することで対応する予定としている。引き続き研究に取り組み、所期の研究目的を達成できるよう、努力していきたい。
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Causes of Carryover |
補助事業期間の初めで報告した通り、残額が生じている主な理由は「予算制約等による衝突模型実験の計画変更(模型船および実験資器材の変更)」であるが、それに加え、2020年度については、新型コロナウィルスの影響により予定通りの研究・成果発表(旅費の使用)ができなかったことが残額が多く生じている理由である。 残額については、未実施の模型実験において必要と見込まれている追加の資器材(RCボート、高速度カメラ、解析用PC・ソフトウェア等)にかかる物品費および成果発表において必要となる旅費として使用する予定である。
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Remarks |
各種の航行安全・海難防止にかかる委員会において学術専門委員を務めている。2020年度に担当した委員会等の実績については、以下の3件である。 宇部港大型客船入出港に伴う航行安全対策調査専門委員会(西海防主催)、種子島西之表港港湾計画一部変更に伴う航行安全対策調査専門委員会(西海防主催)、VLCC等大型船舶の沿岸漂着防止緊急措置に関する調査検討委員会(日海防主催)。
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