2018 Fiscal Year Research-status Report
手術の終了時刻の不確実性を考慮した手術室のスケジューリング手法の開発
Project/Area Number |
18K13952
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 真理 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (20778211)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スケジューリング / 確率計画法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は, (1)問題のモデル化: Conditional Value-at-Risk (CVaR)のリスク尺度を用いた確率計画問題としての定式化の提案を以下のように遂行した. (1) 手術の所要時間の不確実性を考慮し,どの手術室でいつ手術を開始するかを決定する手術室のスケジューリング問題のモデル化を行った.具体的には,予定の手術終了時刻からの大幅な遅延による待ち時間を回避するために, リスク尺度としてCVaRを目的関数に考慮した.各手術の所要時間を確率変数とし,対数正規分布に従うとした.手術の所要時間の組み合わせのシナリオを100個生成し,数値分析を行った.これらのシナリオは実データから作成した.手術の遅延時間の期待値とCVaRを目的関数に考慮し,それらの考慮度合いを変更した結果, 手術の遅延時間の期待値とCVaRにトレードオフの関係があること,両方を目的関数に考慮することで,一方のみを考慮するときよりも総待ち時間が最小になることが明らかになった. 本年度は,上記の成果の一部を,講演会や国内学会にて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,CVaRのリスク尺度を用いた確率計画問題としての定式化を提案し,おおむね順調に進んでいるものと考えられる.本年度は,上記のいくつかの進捗を講演会や国内学会で発表し,関連研究者と議論することができ,来年度の研究内容がより明確になった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの項目(1)の提案モデルを手術と手術室数を増加した問題へ適用していき,(2)の確率計画問題の解法を提案することを考えている.今後の研究の詳細は以下のとおりである. 想定されるシナリオ数が増えるにつれ,変数と制約式の数も増大するので,大規模な線形計画問題となりうる.コンピューターの処理能力や汎用ソルバーの性能向上により,大規模な線形計画問題であっても高速に効率的に解ける場合が多いが,それでも実行可能な時間内に最適解を得ることができない場合,分割法を用いると有効であることが一般的に知られている.分解法とは,大規模な問題をより小さな問題に分解し,それを反復して解くことにより最適解を求める方法である.特に,手術室のスケジューリング問題のように,多数の整数の変数を含む場合には,分解法により効率的に解くことができる可能性がある.分解法の有名な手法の一つに,Bendersの分解を応用したL 型法があり,本研究では本手法を用いて,定式化した問題を解く.また,研究成果については進捗を国内学会や国際会議で発表すると共にオペレーションズ・リサーチや医療系のジャーナルに投稿することを考えている.
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Causes of Carryover |
大規模な数値分析を効率よく実施するために,より高機能な最適化ソフトウェアを購入する予定であったが,現問題規模に対しては現有ソフトウェアによる求解が可能であったため,未使用額が生じた.しかし,次年度以降, 手術と手術室数の増加に伴う変数と制約式数の増加によって,大規模な計算実験が必要となるため,未使用額はその経費に充てることとしたい.
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