2018 Fiscal Year Research-status Report
パルスおよび定常強磁場を用いた巨大磁気熱量効果の発現機構解明
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18K13979
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木原 工 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80733021)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ホイスラー合金 / 磁気熱量効果 / 磁気冷凍 / 強磁場 / メタ磁性形状記憶合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Ni-Mn基ホイスラー合金NiMnZ(Z=Ga, In, Sn, and Sb)が磁場誘起マルテンサイト変態する際に示す特異な磁気熱量特性の起源とその組成依存性を解明することを目的としている。本年度は、相転移温度を室温付近に調整するためにNiサイトに少量のCoを置換した四元系合金NiCoMnGaを用い、パルス強磁場下の磁化、磁歪、定常強磁場下の比熱測定等を進めた。立方体に整形した多結晶試料を用いて縦及び横磁歪を56 Tまで測定し、体積変化を見積もった。このデータと圧力下X線回折実験から求めた圧縮率の情報から、磁気体積効果に起因するエントロピー変化を定量的に見積もった。また、16 Tまでの磁場中比熱測定から、単一試料を用いて転移前後における電子比熱係数およびデバイ温度をそれぞれ見積もった。ここから、磁場誘起相転移に伴って状態密度が大きく増加していることが明らかになった。過去に行ったNiCoMnInの結果との比較から、Ni-Mn基ホイスラー合金には、組成によって構造相転移に伴う格子エントロピーの変化が支配的な場合と、格子エントロピーに加え状態密度変化に伴う電子系のエントロピー変化が大きく寄与している場合に分類できることが明らかになった。更に、第一原理計算の結果と比較することで、上記のような組成依存性は、Niのd軌道がフェルミ面近傍に作る状態密度のピークが強く関係していることが明らかになった。これらの成果の一部は、2件の国際会議および2件の国内会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相転移前後の状態密度変化が理論と実験の両方から得られ、更にその組成依存性を議論できるようになったことで、Ni-Mn基ホイスラー合金の磁気熱量効果における電子系の寄与が微視的な視点から明らかになった。実験で得られる磁気熱量効果は電子系、格子系、磁気系のエントロピー変化の総和であるので、それぞれの寄与を個別に評価することは極めて重要であり、組成に強く依存するNi-Mn基ホイスラー合金の磁気熱量特性の解明に向けて本研究を大きく前に進めることができた。また、比熱測定プローブを改良したことで、測定精度を大幅に向上させることが出来た。更に、東北大学金属材料研究所の24 T級無冷媒超伝導磁石を用いて温度計の較正や比熱測定のテストを行ったことで、より高磁場領域での比熱測定に向けての準備が整った。これによって転移磁場が高くこれまで実験出来なかった組成にもアクセスできるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Z=Sn, Sbへと手を広げ、Ni-Mn基ホイスラー合金の特異な磁気熱量特性の起源を解明する。更に、関連物質であるPdMnSnを用いたパルス強磁場下磁気熱量効果測定を行い、磁気エントロピーの寄与を組成依存性も含めて理解する。
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Causes of Carryover |
測定系の最小限の改良で十分精度良く比熱測定を行うことが出来たため、当初予定していたプローブの改良にかかる物品費を一部節約できた。次年度は、引き続き実験に必要な物品費や出張費に使用するとともに、実験で得られた成果を国内、国際学会で発表するための費用や論文として発表するための費用として使用する。
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Research Products
(7 results)