2018 Fiscal Year Research-status Report
Extension of dopant occupation site analysis by electron channeling X-ray spectroscopy and electron diffraction mapping
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18K13991
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大塚 真弘 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60646529)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 電子チャネリング効果 / ALCHEMI法 / 蛍光X線分光 / 電子回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らが推進している透過電子顕微鏡(TEM)における電子ビームロッキングをベースとした結晶材料定量分析手法(ALCHEMI法及びその発展的手法)の更なる高空間分解能化と汎用化を行い、実用材料における結晶中に拡散した不純物のナノ物性状態を明らかにする分析手法を確立することである。 TEMにおけるビームロッキング分析では、集束レンズの収差と偏向コイルの連動の不完全性によりビーム照射位置(ピボットポイント)が固定できず実質的な分析の分解能(ビーム径)は1μmに至るマイクロ分析であった。本研究では、先ず研究目的の前者を達成するため、ビームをソフトウェア制御するプラグインにこれらの(広義の)収差を補正する機能とそれに同期してエネルギー分散型X線分光(EDX)や電子エネルギー損失分光(EELS)スペクトルを収集する機能を合わせたシステムの開発を進めた。いくつかの問題点は残っているが、現時点でビーム径は数十nm程度にまで至りナノ~サブマイクロ分析が可能な段階へとなった。これにより実際に結晶粒界などの局所領域を狙った計測ができることを確認した。 研究目的の後者に対しては、ビームロッキングに同期した電子回折像のマッピングデータを更なる情報として用いる試みを進めている。先ずは、電子ビームを歳差運動させるプリセッション電子回折データを用いることを考え、上記のソフトウェア型のビーム制御/分光システム上でデータ収集が可能であるか等の基礎検討を進めた。未だ初期検討に留まるが、プリセッション電子回折データが安定して取得できることは確認できている。 また、開発中のこれらのシステムを複数の非等価なFeサイトを含むW型六方晶フェライト磁石の分析へ応用し、各Feサイトの電子状態評価を明らかにすることで磁気特性の起源に関わる情報を捉えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来システムにおける本分析手法(TEM-ALCHEMI法及びその発展的手法)の実施においては、電子ビームのピボットポイントが揺らいでしまう制約により格子欠陥等の局所領域が狙えないだけでなく、バルク領域の分析においてもビーム位置の揺らぎで一つの計測の間に異なる試料厚みの領域を計測してしまう問題があった。そのため、試料厚みの変化に敏感なEELSスペクトルを用いた分析などは容易ではなく、サイト選択的な電子状態評価の信頼性には難点があった。本研究で整備している計測システムにおいては、ビームのソフトウェア制御によりビーム径が100nm以下まで縮小できており、これらの問題は大幅に解消された。現段階において、フェライト磁石や酸化物超伝導物質等への応用を進めており、従来と比較して高品質なデータの取得に成功している。 また、電子回折像を用いる試みについては実験的には初期検討までしか進んでいないが、これらのデータを理論解析するための動力学的電子回折理論計算を行うプログラムの基礎部分の開発は概ね完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に関して大幅な変更はない予定である。 TEM-ALCEHMI法の高空間分解能化については、ビーム制御ソフトウェアをベースとした収差補正機能付き測定システムの構築によりほぼ完了している。今後はソフトウェアのバグ等の細かな不具合の修正を進めると共に、磁石材料や超伝導材料、誘電体材料等の実用材料分析への応用を進めていく。 TEM-ALCHEMI法に電子回折データを組み合わせて分析を行う試みについては当初予定より実験面で遅れがある。しかし、プリセッション電子回折を用いる方法については、標準試料によるテスト実験によりデータ取得に問題がないことは確認済みである。従って、開発中の理論計算プログラムの整備と並行して実用材料への適用検討を進める予定である。また、これらの電子回折データから結晶構造情報を引き出すため方法として、動力学的電子回折理論計算と機械学習法を組み合わせたデータ解析システムの確立を目指す。なお、現段階ではプリセッション電子回折データをベースにする予定だが、その他の回折データを用いる方法についても検討を進める。
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Causes of Carryover |
当初予定では、H30年度には本研究で開発する実験システムの雛形として用いるビーム制御プラグインの導入(又はアップグレード)と計算負荷のかかる理論計算や機械学習を用いるために増加する計算コストに対応するために計算機の導入を計画しており、それらの高額物品の購入費用を計上していた。しかし、前者については開発業者との共同研究により現在保有している旧システムで検証を進めていく中で実用面でのいくつかの修正すべき課題が見つかったため、現在を修正を行っている。そのため、この制御プラグインの購入時期をH31年度へとずらしたため、次年度使用額が生じた。また、それに伴って複雑な実用材料の解析試験の時期もずれたため、後者の計算機の購入時期もH31年度へと移行したため、この分についても次年度費用額が大幅に生じた。H30年度の研究実施内容としては、実験システムの基礎開発と手法の妥当性の基礎的な理論検証が主体となったが、内容の大幅な計画に変更はないため、単純に上記高額備品の購入時期を後ろ倒しして計画を遂行する予定である。
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