2019 Fiscal Year Research-status Report
近赤外広帯域固体光源に向けた遷移金属イオン添加蛍光体の発光波長制御に関する研究
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18K13995
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
七井 靖 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 助教 (80755166)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 蛍光体 / 近赤外線 / 3d遷移金属イオン / 近赤外光源 / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度得られたCr3+,Cr4+共添加Mg2SiO4(Mg2SiO4:Cr)蛍光体について、焼成条件が発光特性に与える影響を明らかにした。また、新たな蛍光体の合成法の確立および発光特性の解明をおこなった。具体的な成果を以下に示す。 Mg2SiO4:Crは約800 nmおよび1120 nmにピークを持つ、650 nmから1400 nmにおよぶ超広帯域発光を示す。前者のピークはCr3+,後者のピークはCr4+に起因する。この蛍光体について焼成温度が発光特性に与える影響を明らかにした。焼成温度を1100℃から1400℃まで上昇させるにつれ、Cr3+に対するCr4+の発光強度比が増加することが明らかになった。発光減衰曲線測定の結果より、発光スペクトル形状変化の要因はMg2SiO4中のCr3+および Cr4+の遷移確率やそれらの存在比の変化だと考えられる。この結果より、Mg2SiO4:Crの発光スペクトル形状を制御する指針を得ることができた。 Ca2GeO4を母体として、Cr4+添加Ca2GeO4(Ca2GeO4:Cr4+)の合成法を確立し、発光特性のCrイオン濃度依存性を明らかにした。いずれのCrイオン濃度でも、1300 nmにピークを持つ1100 nmから1600 nmにおよぶ広帯域発光を示した。励起スペクトルより、これは Ge サイト中に添加された Cr4+による発光だと考えられる。光出力は Crイオン濃度 0.1mol% で最大値をとり、濃度の更なる増加に伴い減少した。蛍光寿命も同様の変化を示すことから、Crイオン濃度の増加に伴う光出力の低下はCr4+の濃度消光によるものだと考えられる。また、Mg2SiO4:CrおよびCa2GeO4:Cr4+粉末を有機樹脂中に封止し、青色LEDと組み合わせることで650 nmから1700 nmにおよぶ超広帯域近赤外LEDを実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mg2SiO4:Crついて、焼成条件により発光スペクトルを制御できることが明らかになった。 また、新しい近赤外広帯域蛍光体であるCa2GeO4:Cr4+を得られた。さらに発展的な課題としてこれらの蛍光体と青色LEDを組み合わせることで650 nmから1700 nmにおよぶ近赤外広帯域発光を1つのLEDで実現できることを実証した。 これらの成果は複数の学会で発表できた(そのうち、招待あり1件)。以上より、本研究は計画通りに遂行できていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたMg4Nb2O9:Cr3+、Mg2SiO4:CrおよびCa2GeO4:Cr4+蛍光体について、構成元素を他元素で置換する。置換量を変化させた時の結晶構造と発光特性の変化を明らかにする。この結果から、発光特性と結晶構造との関係を明らかにする。また、発展的な課題として本研究で得られた蛍光体とLEDとを組み合わせた近赤外広帯域LEDを作製し、光源としての発光特性の評価もおこなう。
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