2018 Fiscal Year Research-status Report
複合カチオンエンジニアリングによる超低熱伝導性酸化物の設計・合成と熱電特性の向上
Project/Area Number |
18K13996
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 学 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (30706750)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱電変換 / Aサイト複合ペロブスカイト / 複合イオン / 熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、チタン酸系ペロブスカイト型酸化物ATiO3のAサイトに3価と1価のカチオンからなる“複合カチオン”を導入することで、フォノン散乱の増強によって熱伝導率を大幅に低減した熱電発電用のn型半導体を創製することである。計画の初年度にあたる2018年度は、 AサイトにLa3+およびAg+あるいはK+を含む(La1/2Ag1/2)TiO3 (LAT)と(La1/2K1/2)TiO3 (LKT)の2種類の新規物質を候補材料として挙げ、これらのバルクセラミック試料の作製を試みた。まず、LATについて固相法およびゾルゲル法での合成を検討したが、ペロブスカイト相は生成するもののAg+の一部が還元して金属Agを生じるために単相の合成が困難であることがわかった。一方、LKTについては固相法およびゾルゲル法のどちらによっても単相の合成が可能であった。またLKTについては高温焼結過程でのKの揮発によって副相を生じる問題があったが、焼成温度や時間さらには犠牲粉末の使用などの条件を詳細に検討した結果、Kの揮発を抑えることに成功し、単相を保ったまま相対密度90%以上の緻密なセラミックスが得られた。還元雰囲気中で焼成したLKTセラミックスは従来材料のSrTiO3と同様に優れた電気伝導性を示し、K+の一部をBa2+で置き換えることでさらに電気伝導性が向上することもこれまでに明らかとなった。これらの結果から主な研究対象をLKTに定めて今後の研究を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに候補材料を(La1/2K1/2)TiO3 (LKT)に定め、そのセラミック試料の作製方法を確立した。したがって初年度の計画であった材料設計と合成はほぼ達成できたと言える。一方、作製した試料が高い電気伝導性を示すことをこれまでに確認したものの、従来材料のSrTiO3と比較すると若干ながら劣っているため、今後さらにプロセスやドーパントの最適化を進めていく必要がある。これらの結果を総合して、計画はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、これまでに作製した(La1/2K1/2)TiO3 (LKT)セラミックスについて熱伝導率の温度依存性を測定し、その結果を従来材料のSrTiO3と比較することで複合カチオンの導入による熱伝導率の低減効果を確認する。またゼーベック係数の温度依存性も同じく測定してこれらのデータから熱電変換の無次元性能指数を算出し、LKTの熱電材料としての可能性を評価する。さらに通常のXRD測定による平均構造の解析と放射光X線を用いた原子対相関関数(PDF)解析による局所構造の解析を行い、LKTの電気伝導および熱伝導特性を結晶構造の観点から考察する。また、Ba以外のドーパント(Sr、Caなど)についても検討し、LKTの熱電特性の向上を図る。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では銀を含む化合物を第一候補材料としていたが、これをカリウムを含む化合物に変更したため、薬品の購入に係る支出が当初の計画よりも抑えられた。次年度使用額は今後に新たに使用する薬品類(ドーパントなど)の購入に充てる予定である。
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