2019 Fiscal Year Annual Research Report
複合カチオンエンジニアリングによる超低熱伝導性酸化物の設計・合成と熱電特性の向上
Project/Area Number |
18K13996
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 学 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (30706750)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱電変換 / Aサイト複合ペロブスカイト / 複合イオン / 熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、まずこれまでに作製した(La1/2K1/2)TiO3 (LKT)セラミックスについて電気伝導性、ゼーベック係数、および熱伝導率の温度依存性を測定した。その結果、LKTのゼーベック係数は既往の代表的な酸化物熱電材料であるSrTiO3(ST)と同程度であるのに対し、熱伝導率については複合イオンによるフォノン散乱の増強に起因して室温においてSTの半分以下に劇的に低減されることがわかった。一方、電気伝導率についてはSTよりも1桁ほど低く、より優れた熱電材料の実現に向けてはキャリアドーピングによる電気伝導性の改善が必要であることもわかった。そこでドナーとしてK+サイトへのBa2+の置換を検討したところ、Ba2+のドープによって室温での電気伝導率が10 S/cmから30 S/cm程度まで上昇し、高温において金属的な温度依存性を示すようになった。現在のところ電気伝導率はST系の材料におよばないが、今後ドーパントの種類および濃度を最適化すればさらなる電気伝導率の向上が期待できる。さらに、LKTについて放射光X線の全散乱測定により得られた原子対相関関数のデータを超格子モデルを用いた逆モンテカルロ法により解析し、K+およびLa3+イオンの空間的な配置を調べた。その結果、K+およびLa3+イオンの配置には秩序性がなく、両者はランダムに混ざっており、これが熱伝導率の低減に大きく寄与していることが明らかとなった。一方で、一部でK+あるいはLa3+のいずれかが多く集まっている数10ナノメートル程度の領域があることも示唆され、熱処理条件等の改善によってこれらの領域をなくすことでさらなる熱伝導率の低減が可能であると考えられた。以上の結果から、本研究で見出したLKTが熱電材料として有望であることが示された。
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