2018 Fiscal Year Research-status Report
Clarification of Origin of Adhesive Property of Carbon Fiber and Thermoplastic by Interfacial Rheology
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18K14001
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
植松 英之 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (80536201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 強化繊維 / 高分子結晶構造 / 接着性 / 分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本事業での目的は、ガラス繊維や炭素繊維で強化された樹脂の性能(特に力学特性)に重要となる繊維と樹脂の接着機構を明らかにすることが目的である。特にリサイクル性の観点からニーズが根深い熱可塑性樹脂をマトリクスとした複合材料において、接着性が低く接着機構が明らかにされていないことが大きな課題である。初年度は、以下の2項目について成果を得た。 (1)樹脂の結晶構造を直接観察しながら接着性を評価することが目的を達成する手がかりとなることから、偏光顕微鏡のステージ上で力学試験が実施できる小型引張(圧縮)試験機を開発した。強化繊維1本を樹脂フィルムに埋め込んだサンプルに引張変形を与えた際の加重あるいは変位を定量化するための仕様に最適化が終了した。 (2)強化繊維回りでの樹脂の結晶構造と接着性を評価するための手法として、2種類の評価を検討した。シングルフィラメントを用いマイクロドロップレット法により樹脂と繊維の界面せん断強度を定量化するサンプルを用いて、繊維とドロップ部分の断面をバフ研磨にて調整することで、偏光顕微鏡による結晶構造観察に成功した。また、偏光顕微鏡観察したサンプルを用いて、顕微ラマン分光法により、樹脂の結晶構造の解析(結晶形態、結晶化度、結晶配向性)を1μmの分解能にて評価できることを見出した。マイクロドロップレット法による接着性と樹脂の結晶構造の関係より、樹脂の結晶構造が繊維近傍から離れる領域において不均一であると接着性が低下することが示された。また、繊維近傍で樹脂が繊維軸方向に配向した結晶構造であることが接着性を向上させる要因となることが示唆された。これまで樹脂の構造を分光学的に評価することは一般的であったが、複合材料の分野において、樹脂の結晶構造解析に応用した事例は新規性が非常に高く、学会発表等で評価が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、樹脂フィルムへ埋め込んだシングルフィラメントを引き抜いた際の加重と埋め込み面積から界面せん断強度を定量化しつつ、樹脂の構造解析することを当初の目標として掲げたが、強化繊維を炭素繊維とした場合、繊維直径が小さく樹脂への埋め込み長さを数十μmで制御する必要がある等のサンプル調整が非常に難しいことから、フィラグメンテーション法による樹脂構造と界面せん断強度の同時評価を実施することに方向転換した。また、均一材料を評価した際には、装置としての再現性や定量性は確認できたため、装置設計は順調に進捗している。一方、構造を評価する手法として、接着している状態ではあるが、偏光顕微鏡観察あるいは顕微ラマン分光分析することで、接着性が高い状態と低い状態を樹脂の結晶構造の観点から解釈できるようになり、学会発表等で高い評価が得られている。従って、本事業は良好に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の成果として、強化繊維を埋め込んだ結晶性樹脂の結晶構造が接着性にどのように影響するかを引張過程で観察することができる小型引張試験機が開発できていることから、偏光顕微鏡観察できる数μmオーダー以上の視覚的に確認できるサイズの結晶構造を変えたサンプル(例えば、冷却条件や結晶核剤など)を用いて、結晶構造と接着性の関係を明らかにする。同時に、初年度に得られた結晶構造を分光学的に評価する手法を用いて、分子レベルでの結晶構造と接着の関係性を明らかにする。また、変形過程で繊維が樹脂から剥離する過程を偏光顕微鏡あるいは分光学的に分析することで、微小な内部破壊の発生と進展機構が解明できるかの可能性を模索する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:3月の活動において必要経費が発生しなかったため、次年度へ有効利用を思考した。 使用計画:他研究機関を含めた評価や分析する際の機器使用料や消耗品に充てる。
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Research Products
(5 results)