2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K14002
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鈴木 航祐 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (80789743)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レオロジ― / リンクル / 微粒子作製 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はせん断下の濃厚微粒子溶液に生じる非ニュートン性の流体挙動に注目し,微粒子の粗さがみかけ粘性および動的粘弾性に及ぼす影響を実験的に調査することを目的としている。粒子に凹凸が存在することで,溶液中の微粒子の濃度が高い場合にはそれらが物理的に接触するような状況が生じると考えられる。摩擦現象(トライボロジー)の観点からは表面間の凹凸の接触は接触点が減れば低摩擦,噛み合うようなことがあれば高摩擦となることが知られており,微粒子集団の流動においてもこれらの影響が表れるのかに注目をしている。このような検討を実験的に行うためには微粒子表面に規則的な凹凸を付与する必要があり,レオロジー挙動を調べるためには安定的に凹凸を付与した微粒子を得られる必要がある。そこで『微粒子の作製ならびに凹凸構造の付与』,『凹凸付与微粒子のレオロジー評価』の2段階で研究を進めることとしている。本年度は『微粒子の作製ならびに凹凸構造の付与』部分について実施した。 凹凸構造の付与方法として微粒子表面へのリンクル(シワ)の付与に着目した。リンクルは柔軟基板上に薄い硬膜がある場合に,基板側方からのひずみによって表面に生じる座屈パターンである。リンクルの断面形状は正弦波状であり,安価に形状の制御を行うのに優れている。既往の方法として,1g満たない量のゴム微粒子表面を混酸により表面を酸化することで硬膜を付与すると同時に座屈を引き起こす方法が報告されており、これをレオロジー測定に耐えられる量の微粒子を得られるよう検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膜透過を利用したPDMS微粒子調製について研究が進展したためやや遅れている。表面に凹凸構造を持った微粒子の作製に取り組んだ。リンクルについて数多くの研究がされている熱硬化性PDMSを用いて、従来の1gに満たないスケールから10gスケールでの調製を目指した。ホモディスパーによりPDMSゾルをPVA水溶液へ微細した溶液を膜透過することで粒径を整えることができた。一次分散させたPDMS液滴は10~数100ミクロンの直径であったが、膜透過により1ミクロン前後の直径の液滴を得た。膜乳化では粒径は膜孔径の数倍になることが知られているが、同等サイズの滴が得られた点、透液速度がすぐに低下してしまう点から分級されていることが示唆された。他方で疎水性PTFE膜(孔径5ミクロン)によるPDMSの直接透過が可能であり、10mL程度のPDMSゾルを直接にPVA水溶液中に膜透過させることができた。PDMSの微細化については超音波ホモジナイザーも実施可能と思われたが、加熱される可能性があるため今回は取りやめた また、得られた粒子については混酸による表面酸化を実施し,SEM像からリンクル構造について評価した。膜透過させた1ミクロン程度のPDMS粒子およびホモディスパーにより多分散の粒径分布とした粒子をそれぞれ混酸により酸化させると10ミクロン以上の直径の微粒子表面には350~800 nm程度の周期の凹凸構造が観察された。またリンクルの凹凸の周期はPDMS粒子の粒径と相関がみられた。混酸組成が同じであれば粒径によって波長を作りわけらえることが明らかになった。また、曲面上における波長から逆算される酸化膜の厚みは5 nmであると見積もられた。
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Strategy for Future Research Activity |
疎水製膜によるPDMSゾルの直接膜透過により、多量の微粒子調製の可能性が見られたことから孔径の大きな疎水性のシラスポーラスガラス膜を用いて多量の微粒子合成を試みる。レオロジーのパートに関しては凹凸形状の付与が10ミクロン以上の粒子に対してしかできていない。そこで,粒径をこのような大きなものに選定した上で懸濁液化を進めていく。粒子濃度によりシアシニング・シアシックニングのいずれかが発現するのかを検討し、その巨視的な流動・凝集状態の観察に焦点を絞ってリンクル構造を付与した微粒子懸濁液のレオロジー特性について明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
PDMS微粒子の作製方法として膜透過を用いることが粒径を揃えるのに有利であることが分かってきたことから、本研究に専用に使用可能な加圧ディスペンサーおよび消耗品となる膜を超音波ホモジナイザーに代わって導入する予定である。
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