2020 Fiscal Year Research-status Report
環境応答性高分子界面活性剤と水系ラテックス間の分子認識架橋によるタフフィルム創製
Project/Area Number |
18K14021
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
川野 真太郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (50646198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 両親媒性高分子 / シクロデキストリン / クマリン / 分子認識 / 超分子ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水中でホスト・ゲスト間分子認識が可能なホスト分子修飾ポリマーとゲスト分子修飾ポリマー間の超分子架橋を利用したネットワークポリマーの形成によるフレキシブルな粘弾性を有する水系タフフィルムまたはゲルの作製を目的としている。 前年度までにホスト分子となるシクロデキストリン(CD)を修飾した高分子の合成および評価が完了している。R2年度はCDホスト分子と相互作用させるゲスト分子として、水溶性のクマリン修飾モノマーの合成を行った。その中で、クマリン分子が、β-シクロデキストリン(β-CD)と1:1の包接錯体を、γ-シクロデキストリン(γ-CD)では2:1の包接錯体を形成することを明らかにした。このクマリンモノマーの重合により、クマリンを側鎖に有するポリマーを合成し、それに対するCDゲスト分子修飾ポリマーとの相互作用を評価するところであったが、興味深い結果が得られたため、下記の通りR2年度の研究を進めた。 水溶性クマリン修飾モノマー: γ-CD= 2: 1の超分子架橋剤を用いた水中in-situ(その場)重合によるネットワークポリマーの合成において、この超分子架橋剤とメインモノマーに水溶性の汎用(メタ)アクリレートモノマーを用い、重合することで、水を包含したネットワークゲルが得られた。また、動的粘弾性測定より、貯蔵弾性率が損失弾性率を上回る、固体的性質を示し、周波数依存性およびひずみ依存性変化に対しても固体的性質を維持し、安定した挙動を示すことを明らかにした。このγ-CDを用いた超分子架橋では、ホスト分子側をポリマーにすることなく単一のγ-CD分子で架橋形成できることから、現在はクマリン修飾高分子ホスト側のみあらかじめ合成を行い、この単一γ-CDホストとのネットワークポリマー形成についても評価を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クマリン修飾高分子(あらかじめゲスト分子側高分子を得ておく方法)の合成および、ホストポリマーとゲストポリマー間の超分子架橋を利用したネットワークポリマー形成とその評価が目的であるため、少し後回しになっているが、水溶性クマリンモノマーの合成には成功し、また、そのモノマーとγ-CDの低分子系からin-situ重合でネットワークポリマー化に成功した。非常に興味深い物性も観測されているため、本成果について論文にまとめ、最終年度にホストおよびゲストポリマー間のコンプレックス作製を行っていく予定である。よって、進捗状況としては、おおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、別の方法による結果も得られたことから、その内容についても成果をまとめている。結果として、1年間の事業期間の延長を行ったところである。今後は、目的としている、クマリン修飾高分子(ゲスト)と前年度合成し、すでに得られているβ-CD修飾ホストポリマー間の1:1超分子架橋を利用したネットワークポリマー作製および物性評価について研究を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は高分子合成に必要なモノマーや、モノマー合成に必要な中間体試薬の購入に充て、物品等では20万円前後の機器に充てた。本来予定であった学会参加による旅費等への使用がなくなったことから、その分を次年度分に繰り越し、論文校閲費、論文投稿費、汎用試薬等に使用する予定である。
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