2018 Fiscal Year Research-status Report
酸化銀分解反応による金属とシリコン系材料の界面形成機構の解明とその応用
Project/Area Number |
18K14028
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 朋己 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30756333)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 酸化銀 / 分解反応 / ナノ粒子 / 接合 / シリコン / 炭化ケイ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、酸化銀の分解反応を活用して、シリコン系材料と銀の間に生ずる界面構造の形成機構を解明するとともに、その反応制御による表面機能化プロセスの確立を最終目標としている。今年度は、当初計画の「①各種シリコン材料に対する界面構造形成能の確認に基づくペースト材設計」に加えて「②静・動的透過電子顕微鏡観察に基づく異種材料間界面構造形成機構の解明」にも並行して取り組み、当初計画以上の成果を得ることが出来た。具体的には以下の通りである。 分解反応により生成した銀の、シリコン・炭化ケイ素への界面構造形成能の検証として、当初計画では酸化銀/有機溶剤比ごとの反応性および接合性評価を予定していた。しかし、比によっては塗布性が変化することが分かった。そこで、温度と時間をパラメータとした予熱プロセス制御した接合によって界面構造形成能を評価した。評価手法として、TG-DTAによる予熱ペーストの熱分析、界面強度評価ならびにナノレベル界面構造観察を実施した。 熱分析の結果、予熱の進行に伴う還元反応および熱分解反応の反応性の変化を確認した。また、接合体評価の結果、接合温度300-500℃における界面中間層形成要件を明らかにした。具体的には、熱分解温度以上の500℃の接合界面に対して、予熱プロセス制御により数nmあるいは50 nm程度の酸化シリコン層の形成を制御可能とした。さらに、各温度の界面構造観察を通して、その形成過程の糸口を掴んだ。一方、熱分解温度以下では、厚い酸化シリコン層は形成されないことを示した。さらに、過剰な溶剤除去および高効率な還元反応を意図した低温予熱プロセスを実施することで、300℃の接合において、25 MPaに至るほどの高い強度を獲得することに成功した。これらの挙動はシリコンおよび炭化ケイ素のいずれにおいても確認され、本手法における両材料の接合機構は同一であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、3年間で以下の3つの項目に取り組む予定である;①各種シリコン材料に対する界面構造形成能の確認に基づくペースト材設計、②静・動的透過電子顕微鏡観察に基づく異種材料間界面構造形成機構の解明、③分解反応の機能化に向けたプロセス設計と応用。当該年度当初実施計画項目である①については、プロセス上の課題も認められたが、手法を適切に変更することで界面構造形成能の確認に基づくペースト材の要件を見出すなど、良好な結果を得ている。さらに、当初2年度目の計画内容である②についても、各温度の界面構造の静的観察を進めており、形成機構に関する知見を得始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、現在進めている項目②に関して、界面構造形成過程を正しく理解するため、各温度ごとのシリコン系材料/銀界面構造の推移を観察する。特に、還元反応あるいは熱分解反応が生じる温度前後では著しい構造変化が生じることが予想されるため、それら温度領域では注意深く実施する。また年度後期には、静的観察結果を参照し動的観察を推進する。さらに、当初計画③分解反応の機能化に向けたプロセス設計と応用に関しても並行して試行する。具体的には、ハイブリッド材料を利用した場合のデータを取得し②にフィードバックすることで、分解反応の界面構造形成への寄与を明確化するとともに、表面機能化法への応用のための知見を得る。
|
Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額が異なった。 【使用計画】当初の計画以上に研究が進み興味深い知見が得られたため、当初計画をベースとして、当初計画③に関する物品費にも充当する。
|