2018 Fiscal Year Research-status Report
自在なアニオン導入に基づく特異な孤立金属サイトを有する高活性ゼオライト触媒の創出
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18K14052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大友 亮一 北海道大学, 地球環境科学研究院, 助教 (10776462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハフニウム / ゼオライト / フッ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、Hf含有ゼオライトにフッ化物イオンを導入する手法の開発を目的に研究を開始した。 始めに、脱アルミニウムしたゼオライトBetaに対して、Hf源およびフッ素源としてそれぞれ塩化ハフニウムとフッ化アンモニウムを導入する方法を検討した。含浸担持法、固相混練法および水溶液中でのグラフト法を行なったが、含浸担持法によってハフニウムおよびフッ素が多く導入された。含浸担持法によって得られたゼオライトHf-Betaは異動水素化反応に対して極めて高い触媒活性を示した。 次にフッ化アンモニウムの仕込み量を変更して含浸担持法による合成を行ない、導入フッ素量の異なるHf-Betaを調製した。仕込み量の増加に伴ってサンプル中への導入量も増加した。仕込みF/Hf = 1まではフッ素量の増加によって触媒活性が急激に上昇し、F/Hf = 1で合成したゼオライトはF/Hf = 0で合成したものの10倍程高い触媒活性を示した。 重水素化アセトニトリルをプローブ分子に用いて、導入フッ素量の異なるHf-Betaのキャラクタリゼーションを行なった。ゼオライト骨格内ハフニウム種と骨格外ハフニウム種の二種類のハフニウム種がいずれのサンプルにも共通して観測されたが、導入フッ素量が増加すると骨格内ハフニウム種が増加し、骨格外ハフニウム種は減少する傾向がみられた。フッ素の導入によって、骨格内ハフニウム種の形成が促進されることが明らかとなった。 フッ素の添加によってゼオライト骨格内へテロ原子サイトの形成が促進されることを見出した。これまでに類似の現象は報告されておらず、メタロシリケートゼオライトの合成に関するまったく新規な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、①フッ化物イオンなどアニオンの添加による高活性メタロシリケートゼオライトの合成法の確立、②添加アニオンがヘテロ原子の構造、電子状態に及ぼす効果の解明、を目的としている。2018年度の研究を通して、塩化ハフニウムとフッ化アンモニウムの共含浸担持法による高活性なハフニウム含有ゼオライトの合成を達成した。また、フッ素の添加によって骨格内ハフニウム種の形成が促進されることも見出した。すなわち、当初目標のうち、フッ化物イオンに関して①の目標と、②の目標の一部をすでに達成し、おおむね順調に進展している。 複数の分析手法によって、フッ素を導入した直後のHf-Beta内でフッ素はハフニウムと結合して導入されていることがわかった。このゼオライトを600度以上の高温で焼成するとフッ素が除去され、高い触媒活性が発現することがわかった。したがって、フッ素は高活性ハフニウム原子サイトの形成を促進する作用をしており、触媒活性には直接関与していない。研究計画申請の段階では、フッ化物イオンと結合したハフニウム種が高活性を示すと考えていたが、このハフニウム種は高活性サイトの中間体であった。ただし、②の目標を含めた当初の研究目的に大きな変更の必要はない。
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Strategy for Future Research Activity |
①2018年度で確立したアニオン共含浸担持法を用いて、Hf-Betaへのフッ化物イオン以外のアニオンの導入を試みる。最初に、フッ化物イオン以外のハロゲン化物イオンの導入を行い、その後にさまざまアニオンの導入を検討する。ハロゲン化物イオンの種類によってHf原子の構造や電子状態、触媒作用がどのように変化するかを系統的に調査する。さまざまなアニオンを添加して合成したHf-Betaのうち代表的なものについては、XPSとXANESなどによってハフニウム原子の状態を詳細に解析し、アニオンが与える効果について究明する。Hf原子のルイス酸性、触媒作用とハロゲン化物イオンの電子親和力や電気陰性度と関連付けて解析することを計画している。触媒反応はケトンの移動水素化反応に加えて、ルイス酸によって促進されるさまざまな触媒反応を実施し、ハロゲン化物イオン導入が触媒作用に与える効果を総合的に評価する。 ②Hf以外のヘテロ金属を含むゼオライトBetaへのフッ化物イオンの導入を検討する。ヘテロ金属の候補として、Hfと同じく+4価をとり、移動水素化反応を促進することが知られているTi, Zr, Snを想定している。金属種ごとに導入方法を適宜最適化しながら検討を進める。これらのゼオライトを用いて移動水素化反応を実施し、反応速度論解析によってフッ化物イオン導入による効果をヘテロ金属ごとに定量的に評価する。異なるヘテロ金属に対するフッ化物イオン導入の効果を、各金属とフッ素原子の相互作用(例えば、金属イオンとフッ化物イオンの硬さなど)と関連付けて考察し、導入効果の傾向に一般性があるか検討する。
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