2019 Fiscal Year Research-status Report
異種ナノ材料の集積を可能とするナノ界面接合抗体のボトムアップデザイン
Project/Area Number |
18K14059
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
二井手 哲平 東北大学, 工学研究科, 助教 (20802705)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗体工学 / タンパク質工学 / ナノ材料 / ペプチド移植 / 計算科学 / 酵母表層提示法 / ファージ提示法 / 大規模セレクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、材料認識抗体の発現量と安定性を克服するための計算機支援によるタンパク質設計と、標的材料の多様化として自己組織化材料に対するペプチド分子の取得に取り組んだ。 ・計算機支援によるタンパク質設計 昨年度までに、金表面を認識する抗金抗体と酸化亜鉛表面を認識する抗酸化亜鉛抗体の二種類の抗体を遺伝子工学的に融合させた金-酸化亜鉛接合抗体を作製し、金ナノ粒子と酸化亜鉛ナノ粒子の集積化を実施した。この研究で、大腸菌発現系での材料接合抗体の生産量の低さが課題として見えてきた。そこで本年度は、原子レベルでの可視化と変異体設計・評価が計算機上で迅速に実現可能な、計算機支援によるタンパク質設計技術を取り入れることで、機能と構造安定性が両立する材料認識タンパク質の作製を目指した。具体的には、複数の足場タンパク質を標的へ様々な角度から近づけ、構造安定性に関与しない位置のアミノ酸を変異させることで、候補タンパク質をデザインした。その中から、計算機上でスコアの良い変異体6万種を酵母表層に提示させ、生化学実験により結合能を評価した。その結果、約9%の設計タンパク質がターゲットに結合し、計算機支援単独で標的親和性のあるタンパク質を設計できることが示された。今後は強く標的に結合するタンパク質を持つ酵母の選択操作によりタンパク質を同定し、材料連結への利用を目指す。 ・自己組織化材料に対するペプチド分子の取得 新しい標的材料として、有機分子が自己組織化した材料を選択し、その表面に結合するペプチド分子の取得を試みた。取得には、1×10^9規模の多様性を持つ12残基のペプチドを提示したファージライブラリーを用いた。選択操作の結果、4種類の有望ペプチド分子の取得に成功した。その中で最も強く標的に結合するペプチド分子は、100 nM以下の解離定数を示した。今後は計算機を用いてタンパク質への構造移植を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ナノ材料界面を認識するバイオ分子を、複数の機能単位を持つヘテロ足場タンパク質へ融合することで、ナノ界面接合抗体へと拡張し、異種ナノ材料の連結と集積化を目的としている。 前年度までに材料認識ペプチドの取得からペプチド移植による抗体化までのプロセスを確立していた為、本年度は大きな障害もなく研究を実施できた。その中でも、ペプチド移植後の低分子抗体は、移植前と比べ発現量が大幅に低下してしまうという課題も見えた為、本年度は新しいタンパク質操作技術として計算科学支援によるタンパク質設計を取り入れた。これは本来の計画には無かったものであるが、本技術は通常の進化分子工学操作と比べタンパク質設計の自由度を向上させるものであり、汎用的なツールとなると考え導入した。実際に、計算機支援による人工タンパク質の設計に成功し、酵母表層提示法による評価により、設計したタンパク質の約9%は標的結合能を有していることを示せた。 さらに本年度は、対象ととなる材料を金属や金属酸化物から、有機低分子からなる自己組織化材料へと展開させた。金属を対象としたペプチド分子の取得と同様、ファージ提示法によりペプチド分子を取得した。加えて、取得したペプチド分子は標的材料に100 nM以下の解離定数で結合することが示され、続く抗体化・タンパク質化に対する期待ができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は、特的の材料表面を認識・結合するペプチド分子を出発点に、ナノ材料を連結可能な材料認識タンパク質を開発することで、異なる種類のナノ材料から成る複合材料を作製することである。 本年度は国際共同研究を通じて、計算機によるタンパク質設計の研究を行い、ソフトウェアの理解と操作手法の習得を達成した。しかし本研究において、計算機支援で得られるタンパク質のうち9割以上は結合機能を持たないタンパク質であったため、構造計算に用いるスクリプトの改良が必要であることが示唆された。中でも、足場タンパク質と標的表面との接近操作において、選択した原子間の束縛距離が近すぎると、側鎖の小さなアミノ酸しか結合界面に存在できなくなってしまい、水素結合や塩橋が形成できなかったことが原因の一つだと考えている。 そこで次年度は、対象同士を近づける際に束縛距離を1から20オングストロームの範囲で変化させてタンパク質を設計し、その結合エネルギーを変化させることで、最適な束縛距離を探索する予定である。さらに、計算科学と進化分子工学の利点を組み合わせたタンパク質設計プロセスを構築し、様々な材料間を連結するタンパク質の構築に取り組む計画である。
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Causes of Carryover |
前年度実施した異種ナノ材料を連結可能な二重特異性抗体の開発の過程で、ナノ材料表面でのタンパク質の構造を予測することは、材料認識二重特異性抗体の開発期間を短縮できると考えるに至った。そのため、本年度は材料表面上のタンパク質構造を予測するソフトウェア開発に取り組み、研究計画を見直したため次年度使用額が生じた。本年度は、タンパク質の構造予測ソフトウェアを活用した材料認識二重特異性タンパク質の開発を実施する。
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Research Products
(3 results)