2018 Fiscal Year Research-status Report
可視光透過-赤外吸収プラズモンナノ粒子を用いた透明太陽電池への展開
Project/Area Number |
18K14074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川脇 徳久 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(SPD) (60793792)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プラズモン / ナノ粒子 / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、いまだ未発見な半導体プラズモンナノ粒子からバルク半導体・金属への「プラズモン誘起電荷分離現象」の観測と、革新的透明太陽電池の開発を目的とする。 プラズモン共鳴の中心波長が1800nmのITOプラズモンナノ粒子を液相合成した。ITOナノ粒子は伝導帯位置がおよそ-4.7 eV v.s. Vacuumであり、波長1800nm(0.68 eV)の光によって励起された電子が、半導体電子受容層に移動する為には、半導体電子受容層の伝導帯位置が-4.0 eV v.s. Vacuumよりも低くなければならない。以上のバンド構造面からの考察を踏まえて、ITOナノ粒子をSiO2・SnO2・TiO2の3種類の半導体電子受容層にそれぞれ担時した。ITOナノ粒子は合成時に長鎖の有機配位子によって保護されているため、半導体電子受容層と直接的に結合できない。そのため、空気雰囲気下、水素含有アルゴン雰囲気下での2段階焼成プロセスを経ることで、直接的な結合を有する界面を作製した。その後、赤外光照射時の半導体電子受容層のフリーキャリアの吸収を、過渡吸収測定によって観測した。過渡吸収測定の結果、ITOナノ粒子からの電子注入はSnO2、またはTiO2で生じることが明らかとなった。さらに、ITOナノ粒子とSnO2(-4.5 eV v.s. Vacuum)の組み合わせで、最も高い電子注入効率を示すことを明らかにした。 この結果から、実際に、表面積の大きなナノポーラス構造を有したSnO2を金属基板に担持し、さらにITOナノ粒子を吸着させて光電気化学測定をしたところ、ITOナノ粒子の吸収スペクトルと一致した形の光電流波長依存性が得られた。加えて、最大波長2100nm-2550nmの赤外光の照射によっても、ITOナノ粒子のプラズモン由来の電子を外部電流として取り出せることを明らかにした。これは、地上に届く太陽光の中でも最も長波長の光であり、太陽光のエネルギーを余すことなく利用できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過渡吸収測定によって、半導体プラズモンナノ粒子から電極への電荷移動メカニズムを物性面から評価した。プラズモン由来のフリーキャリア注入に基づく半導体電子受容層の光吸収量を比較したところ、ITO ナノ粒子/SnO2(CB =-4.5 V vs Vacuum)間で電荷分離が生じることが明らかとなった。さらに、犠牲剤であるtriethanolamine(TEOA)を含むアセトニトリル中で、ITO ナノ粒子/SnO2基板に赤外光を照射したところ、外部回路を通じて光電流を得られることがわかった。以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
従来型の太陽電池において、最も高い光電変換特性が得られるのはバンドギャップ約1.2 -1.4 eV(= 1000 - 860 nm)であるため、まずは、合成法が確立されており、およそ1100nmに光吸収ピーク波長を持つプラズモンナノ粒子であるCuSを合成し、デバイス作製を行う。これまでに、CdSとCuSが直接的に結合したヘテロ接合ナノ粒子において、赤外光を照射することによって、CuS中のホールがCdSに移動し、長寿命の電荷分離が可能であることが報告されている。CdSとCuSはそれぞれn型、p型半導体であり、p-n接合を形成することによって、高い電荷分離効率を示すことが期待される。
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