2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K14080
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩谷 広樹 大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 特任助教(常勤) (50417135)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 層状物質 / グラフェン / 歪み / WSe2 / WO3-x / 熱伝導率 / 光触媒 / ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の主要な研究実績は、遷移金属ダイカルコゲナイドの一種である2次元層状物質WSe2の層別選択酸化の手法を独自開発し熱伝導率の異方性を可視化した事に加えて、従来観測されなかった長時間(およそ1年)に及ぶドーピング状態をゲート電圧印加に頼らない方法で実現した事です。これを基に国内学会での発表を実施しました。論文化可能な実験データを得て学会発表に踏み切り、現在では当該データを学術雑誌へ論文投稿する準備が終わりつつある状況です。 層状物質は、層同士がvan der Waalsを介して弱く結合(積層)し、層内の原子間は共有結合を介して強く結合しています。この為、層間と層内の相互作用に大きな差異(層内>層間)が生じた結果、物理特性に異方性が生じます。特にWSe2の層内熱伝導率は層間熱伝導率に比べて30倍も高いという先行研究報告があり、この熱伝導率の異方性を層別選択酸化に利用しました。2層WSe2の構成面に対して垂直に532nmレーザーを入射させた場合、その照射時間が短ければレーザー照射に起因する熱拡散が主に表層面内に生じる事を表層酸化を用いて示す事で熱伝導率異方性を改めて確認しました。表層が選択的に加熱された結果表層のみ酸化される事は酸化後の透明化から判断され、熱伝導率異方性の可視化に成功しました。表層WO3-xと下層WSe2とでは電子親和力が異なる為、電荷移動が生じドーピング効果が発現します。我々は、フォトルミネッセンスピーク成分の解析からドーピング度合いを見積もり、高いゲート電圧印加状態と同等状態が1年以上に渡って保持される事を確認しました。これらは材料科学のみならずデバイス応用の観点からも有意義な成果と言えます。 本研究計画の主目標はグラフェンが歪んだ場合の物性探求ですが、実験条件の最適化に時間が掛かる為に、保険として広い意味で同類材料を用いた成果を挙げる事に成功しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェンを歪ませる技術の基礎検討は進んでいるからです。 現在、歪んだグラフェンに関わる論文化可能な新しい実験データは未だ得られていませんが基礎検討が重要な挑戦的テーマなので着実に実験を進めて行けば成果が挙がると見込んでいます。
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Strategy for Future Research Activity |
一軸性歪みが印加されたグラフェンの電気伝導測定を、4端子で可能にする歪み印加方法を実現し電気特性評価まで繋げる計画です(2端子の測定は過去に実証済み)。 擬磁場を発現させるより複雑な歪み状態の印加方法を継続して検討し、擬磁場の制御を目指します。
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Causes of Carryover |
研究計画の再考に当たり、次年度以降での用途が考えられた為。
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