2018 Fiscal Year Research-status Report
アークプラズマ蒸着法を用いたサブナノ磁石の創出と二次元配列制御
Project/Area Number |
18K14084
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井田 由美 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (10792278)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸化鉄ナノ粒子 / グラフェン / アークプラズマ蒸着 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ粒子を構成する「原子数」や「構造」に応じて化学的、磁気的性質が顕著に変化すると予想され、粒径1 nm付近のサブナノ粒子の磁気特性を対象とした研究は未開拓領域である。 本研究は、アークプラズマ蒸着法を用いたサブナノ粒子(サブナノ磁石)の創製法の確立と、サブナノ粒子固有の磁気特性を明らかにすることを目的とする。アークプラズマ蒸着法では放電回数によって粒径制御が可能であるため、最小構造の磁性サブナノ粒子を作製することができる。このサブナノ粒子の磁気特性に着眼し、新しい物質系となるサブナノ磁性粒子(サブナノ磁石)を開発する。 本年度は、アークプラズマ蒸着法を用いたサブナノ粒子(サブナノ磁石)の創製法の確立するために、適切な担体を探索した。グラフェン類縁体を含む数種類のカーボン担体(ケッチェンブラック、酸化グラフェン、グラフェンナノプレートレット)を用いて、酸化鉄ナノ粒子を作製した。STEM観察より、粒径1 nm付近の酸化鉄サブナノ粒子の作製に適した担体は酸化グラフェンであり、次にグラフェンナノプレートレットであることを明らかにした。また、酸化鉄サブナノ粒子固有の磁気特性について、磁気ヒステリシスの有無を調査した。酸化グラフェンに担持した酸化鉄では磁気ヒステリシスは観測されず、グラフェンナノプレートレットに担持した酸化鉄では、磁気ヒステリシスを観測した。このような磁気挙動の違いは、担体による影響が大きく、担持した酸化鉄粒子の形状の違いによって、磁石性能が左右すると推測される。 磁石性能を決定づける酸化鉄粒子の構造を推定するために、XPS、メスバウアー、XAFS等の測定及び解析を進めており、γ-Fe2O3に類似した構造をもつことを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アークプラズマ蒸着法を用いた酸化鉄サブナノ粒子の創製法について、適切な担体は酸化グラフェンであるということを明らかにした。酸化グラフェンに担持した酸化鉄では磁石性能が劣ることが分かり、グラフェンの類縁体であるグラフェンナノプレートレットに担持した酸化鉄粒子では、磁石性能を示す磁気ヒステリシスを示した。サブナノ磁石には、平面構造を有するグラフェンナノプレートレットが相応しいことが見出された。 さらに、サブナノ粒子サイズでは構造決定は困難とされているが、グラフェンナノプレートレットに担持した酸化鉄ナノ粒子を用いて、XPSやメスバウアー、XAFS測定から構造推定できたことは大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化鉄サブナノ粒子は、担体によって磁気挙動が異なることが明らかになった。平面構造をもつグラフェンナノプレートレットに担持した酸化鉄の形状は、磁石性能を決定づける磁気異方性が強いと推測される。 磁気異方性の強い酸化鉄の形状を形成させるには、密着性が高い粒子の作製ができるアークプラズマ蒸着法と平面性をもつ担体の組み合わせが重要であるという知見が得られた。 この知見をもとに、鉄をベースとした合金粒子の作製を行う。まずは、鉄と組み合わせる金属の選定を行い、組成比を変化させて試料を作製する。組成比によって、磁石性能がどのように変化するのかを明白にする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、検討に用いた担持体が安価なもので代用可能であったり、実験に必要な備品が既存のもので代用できたためである。また、装置に必要なヘリウムガスの消費を抑えられたためである。 使用計画として、当初の計画以上に進展しているため、合金粒子の試料作製に必要な金属ターゲットを購入する。それと並行して担体の開拓に割り当てる。また、学会発表、論文投稿に費用を当てる。
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