2018 Fiscal Year Research-status Report
架橋カーボン/無機ハイブリッド電子注入層を用いた有機レーザーの高寿命化・高効率化
Project/Area Number |
18K14090
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲田 雄飛 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 助教 (90770941)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 有機 / レーザー / カーボン / ハイブリッド / 電流注入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機半導体結晶を発光層に用いた電流注入型レーザートランジスタにおいて、架橋カーボン/無機ハイブリッド材料を鍵とした新たな電子注入層の設計により、電極耐久性および電子注入効率の同時改善を目指す。 本年度は、カーボン材料としてフラーレンを用い、(I)架橋条件の検討、(II)架橋したフラーレン薄膜の構造評価、(III)架橋したフラーレン薄膜を電子注入層に用いた有機結晶トランジスタの作製、および(IV)デバイスの電流-電圧特性の評価を行った。 酸化膜付きシリコン基板上に有機半導体オリゴマーの単結晶を貼り付け、その上からフラーレン薄膜を真空蒸着した。フラーレン分子の架橋処理として、水銀ランプ光、CWレーザー光(450 nm)、パルスレーザー光(波長355 nm、532 nm)および電子線の照射を検討した。その結果、この中では、窒素雰囲気下でパルスレーザー光(波長532 nm)を照射した試料において、フラーレン分子間での架橋を示唆する結果が、ラマン分光測定および光電子収量分光測定によって得られた。このようにして作製した架橋フラーレン薄膜上に、一対の銀電極を真空蒸着した。以上の方法により、銀電極を正孔注入電極および電子注入電極に、また、基板のシリコン部分をゲート電極に用いた電界効果型トランジスタを作製した。真空中において、二つの銀電極から正孔と電子が同時に注入されるように、各電極に電圧を印加したところ、正孔由来の電流は観測されたが、電子由来の電流は観測されなかった。現在、その原因を究明中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子注入層に無機材料をハイブリッドさせる工程を除いては、本年度分の実験を計画通りに実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「研究実績の概要」で述べた通り、架橋したフラーレン薄膜を電子注入層として用いた有機結晶トランジスタにおいて、正孔由来の電流は観測されたが、電子由来の電流は観測されなかった。電子輸送の阻害は、(i)「電極から有機半導体結晶への電子注入」、(ii)「有機半導体結晶内での電子輸送」の一方あるいは両方の過程で起こり得ると考えられる。本研究では、過程(i)の改善に焦点を置くため、過程(ii)における電子輸送の阻害要因を排除した上での実験・議論が不可欠である。そのため、今後は有機半導体材料の精製による高純度化やデバイスの封止工程を加える予定である。その上で、電子注入層に無機材料をハイブリッドさせたデバイスを作製し、電極耐久性および電子注入効率(実質的には電子移動度)を評価することによって、架橋カーボン/無機ハイブリッド材料の電子注入層としての有用性を明らかにする。
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