2018 Fiscal Year Research-status Report
表面融液エピタキシャル結晶成長の機構解明とナノ構造形成への応用
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18K14129
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
西村 高志 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10757248)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シリコン / 準溶融状態 / 液相エピタキシャル成長 / 鉄シリサイド / 半導体微細加工法 / 溶融凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコン(Si)表面を通電加熱すると深さ数マイクロメータ程度の融液を形成できる(準溶融状態)。本研究では、Si準融液状態がエピタキシャル成長して形成する表面微細結晶の形状と内部構造、組成の決定要因を解明する。特に表面融液が応力や垂直高電界の印加、微量金属の蒸着、エレクトロマイグレーション(表面融液が電界あるいは電子流の方向へ移送される現象)やSi表面結晶異方性の影響を受けて形成する表面微細結晶に注目する。従来、不安定で活用されなかった表面融液であるが申請者の研究成果を基に結晶成長の機構を明らかにし、Siやシリサイドの表面微細結晶形成へ応用する。 本年度は表面融液へ垂直高電界の印加と微量金属蒸着ができるように本研究室で保有する超高真空装置の改造を行った。この装置は昨年度までに超高真空下でSiウェハへの応力印加と通電加熱が可能な機構となっていた。そこへ高電界印加電極と高電界印加電気回路を設置した。さらに微量金属蒸着を行うために新たに上記チャンバへゲートバルブを介して蒸着用チャンバを設置した。また金属蒸着用の100 A電源の開発も行った。 この装置を用いて金属ドープ量を変化させた場合に表面Si融液の液相エピタキシャル成長により形成される表面結晶構造の変化を調べた。初めに集積回路の配線材料として広く利用されている銅(Cu)をSi表面へドープした。その結果、表面温度1300度程度でSi表面を準溶融状態にしてエピ成長すると銅シリサイドの形成は確認できなかった。これは銅の蒸気圧が高いため表面より蒸発したためだと推測される。そこで銅より蒸気圧の低い鉄(Fe)をドープしてエピ成長を試みた。その結果、鉄シリサイド結晶を先端に担持した単結晶Si突起構造が形成した。Fe蒸着量を増加させると鉄シリサイド結晶の形状も大きくなった。また、その表面は縞状の構造をしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究ではSi表面融液のエピ成長過程の解明を目指しているが、これまでの実験系では金属ドープ量を正確に制御できず加熱電極からの拡散により行ってきた。このため金属ドープ量が安定せず定量的な議論が難しかった。そこで精密な実験を展開するために金属ドープ量を制御する必要がある。初年度は金属蒸着チャンバの増設を行い銅(Cu)と鉄(Fe)をドープして研究を行った。蒸着チャンバはベースプレッシャーが超高真空であり蒸着はルツボ抵抗加熱による方式とした。Siウェハを加熱加圧する超高真空チャンバはゲートバルブを介して接続しているので金属蒸着とSi表面溶融の一連の実験を超高真空下で行える。始めに集積回路配線材料として広く用いられているCuをSi表面へ数Åの厚さ蒸着し、その後Siウェハ表面を1300度程度で溶融し液相エピ成長を行った。その結果、形成した結晶表面にはCuが存在しなかった。これは蒸気圧の高いCuなどの金属は本実験系ではドープが難しいことを示し、これ以降は低蒸気圧金属のFeをドープする実験を進めた。Feの蒸着量を増加させるとSi表面が溶融する温度が低下し、シリサイド結晶が大きくなりその表面では縞状の結晶が成長することが分かった。Fe低蒸着量でのシリサイド結晶表面は粒子状の構造を持っていた。Fe蒸着量の増加による表面溶融温度の低下はSi-Fe相図より理解できる。この結果により準溶融状態液相エピ成長の微量金属ドープに対する初めての定量的な知見を得ることができた。 以上の金属蒸着した準溶融状態液相エピ成長は金属蒸着量を正確に制御しているので再現性が良い。このエピ成長に対して高電圧印加の影響を明らかにするために超高真空下で5 kV程度印加できる機構の開発を行った。高電界印加機構として短絡電流保護回路、高電界電極の稼働機構の開発を完了して超高真空装置へ設置した。
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Strategy for Future Research Activity |
Siウェハ表面融液の液相エピ成長に関して基本的な学理を明らかにするために、これまで明らかにしたFeドープ(蒸着)Si表面融液の結晶成長をSiウェハ面方位を変えてさらに詳しく調べるとともに、表面融液に対する高電界印加特性も明らかにし、さらにリソグラフィーで製作した表面エッジ構造に対して表面溶融エピ成長を行いエッジの規則性を利用した微小結晶の規則的配列を試みる。 これまでFe蒸着Si表面融液のエピ成長に関してSi(111)基板における特性を調べてきた。そこで次にSi(100)基板における特性を調べ、さらに二つの基板で形成した結晶構造の断面観察を行い結晶内部の構造も明らかにする。Si(100)のSi原子面密度はSi(111)よりも少なく蒸着金属が結晶内に拡散しシリサイドを形成し易いと推測される。そのためSi(100)面でエピ成長した結晶内部はシリサイド結晶が内包した構造となる可能性がある。面方位の違いが結晶内部構造へ与える影響を明らかにしたい。その後、Fe蒸着Si表面融液のエピ成長過程において高電界場を印加してその影響を調べる。通電加熱電流により正に電離しているSi融液は正の高電界場に対して斥力を受け、負の高電界場に対しては引力を受けると推測される。このため正電場印加により表面融液が斥力により広がり、また負電場印加により融液が引き上げられ鋭い構造となる可能性がある。この電界場への応答はFe蒸着量により変化する可能性もある。電界場が表面融液液相エピ成長に対して作用し微小結晶の構造や組成を制御できることを期待している。 また、表面エッジ構造部では表面エネルギーが大きく融液の流れが塞き止められる作用が報告されている。この特性を利用して規則配列したエッジ構造部でSi表面融液を堆積させ微小結晶の規則配列化を試みる。すでに表面エッジ構造は名古屋大学で形成した。
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Causes of Carryover |
今年度は予定通りに予算執行を行ったが消耗品等の購入で予定との差額が生じ203円の余剰金が生じた。次年度は研究計画通りに予算を執行する予定である。
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Research Products
(3 results)