2018 Fiscal Year Research-status Report
回路論に基づく音響メタマテリアル設計理論と音響透明マントへの応用
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18K14132
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
永山 務 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (80781997)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 変換音響学 / 音響メタマテリアル / 音響透明マント / 回路論的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度は, 回路論的アプローチに基づく変換音響学のための音響メタマテリアル設計理論の確立を目指した. まず, 電磁波の分野における先行研究で既に確立している, 変換電磁気学のための電磁メタマテリアルの設計理論を参考にし, 先行研究で提案していた2次元異方性媒質等価回路モデルから得られる回路方程式と, 変換音響学のために必要な非対角成分を有する質量密度テンソルを持つ異方性媒質中を伝搬する音波に対する音響方程式を比較することで, 回路モデルの回路パラメータと音響メタマテリアルの媒質パラメータの対応関係を導出した. その結果, 質量密度テンソルの対角項は単位長さあたりの回路の自己インダクタンス, 非対角項が単位長さあたりの相互インダクタンス, 体積弾性率が単位長さあたりのキャパシタンスの逆数に対応することが分かった. 次に, 理論の妥当性を示すために, 音波に対して平らな面上にある物体を覆って見えなくする音響カーペットクローク(反射型の音響透明マント)を回路モデルを用いて設計した. また, シミュレーションにより振幅と位相を計算し, (a)平らな面上に物体がない場合, (b)物体はあるがカーペットクロークで覆ってない場合, (c)物体を回路モデルで設計したカーペットクロークで覆っている場合の3種類の計算結果を比較することで動作を検証した. その結果, どの入射角度で音波を入射してもカーペットクロークが動作し物体を見えなくすることができることを確認した. さらに, レーダークロスセクションを計算することで数値的にも設計したカーペットクロークが動作することを示した. 以上の結果から, 当初の計画通り, 回路論的アプローチに基づく変換音響学のための音響メタマテリアル設計理論を確立することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H30年度の計画における研究目標は, 研究実績の概要の通り達成している. おおむね順調としているのは, H30年度中に応用物理学系の論文誌への論文投稿および掲載を終える予定であったが, 投稿が遅れて3月末となったため, 成果発表が次年度になるためである. 以上より, H31年度の計画自体は予定通りに開始できる状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
H31年度はH30年度に確立した理論に基づき, 音響透明マントの実現を目指す. 電磁波の分野における変換電磁気学に関する先行研究を参考にし, (1)回路モデルと等価となる構造の検討, (2)構造を用いた透明マントの設計と動作検証, (3)透明マントの実装と動作の実験的検証といった手順で本研究を実施する. 研究を遂行する上での注意点であるが, 手順(1)および(2)では手順(3)における実装の際のサイズ制限や材料およびそのコストを考えながら現実的に試作可能な構造を検討する. また, 本研究で実際に作成する音響透明マントの種類についてであるが, 手順(3)における実装や実験のし易さを考慮して, H30年度の理論の検証で取り扱った比較的実現性の高い, 反射型の透明マントである音響カーペットクロークから検討する. 上記のような計画で実施し, 最終的には応用物理学系の学会および論文誌で成果を発表する予定である.
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Causes of Carryover |
本金額は, 論文投稿のために残していたものである. 当初計画では本年度中に使用する予定であったが, 研究内容のまとめと論文誌への投稿が遅れたため, この未使用分が次年度使用額として生じた. 現在, 応用物理学系の論文誌に研究内容をまとめた論文を投稿しており, 投稿中の論文の掲載が決定次第, 速やかに使用する予定である.
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