2018 Fiscal Year Research-status Report
Integrated Interpretation of Nanomechanical Sensors Based on Micro-Macro Dynamics
Project/Area Number |
18K14133
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
今村 岳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (60715754)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | test |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではナノメカニカルセンサをプラットフォームとして、分子スケールのダイナミクスがマクロなダイナミクスにどのように寄与しているかを統一的に解釈することを目的としている。具体的には、ナノメカニカルセンサの感応部位である感応膜のマクロな性質である粘弾性的性質に注目しその理論モデルを構築し、実験結果とモデルを比較することを行いつつ、感応膜材料の分子構造を系統的に変化させその応答特性を評価することで分子スケールのダイナミクスを理解することを並行して行った。これにより、ミクロ・マクロそれぞれのダイナミクスを定量的に評価することが可能となる。 まず粘弾性的性質の評価であるが、2008年にWenzel等が提唱したモデルを元に、シグナル応答の定式化を行った。これは、代表的なナノメカニカルセンサであるカンチレバーをモデルとして、その上に薄い粘弾性体が感応膜として被覆された系を想定しており、試料ガスの感応膜への拡散と、ガス吸収・脱着に伴う応力緩和の2つの現象でセンサの応答を記述している。その結果、試料ガスとパージガスを同じ流量で一定時間ナノメカニカルセンサに導入した場合の応答波形を、試料ガス導入時・パージ時でそれぞれ解析的に表現することに成功した。 一方、感応膜材料でのダイナミクスを分子スケールで評価するために、中心金属を変えたポルフィリンを感応膜材料として塗布しその応答特性を評価した。ただし、本研究では中心金属の違いを評価するために、置換基を持たない環状構造のみであるポルフィンを用いた。その結果、中心金属の配位構造に依存して、選択性・感度・耐湿度性を変化させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ナノメカニカルセンサのダイナミクスをミクロ・マクロで理解することを目的としており、ミクロな描像としてはポルフィリンを用いた分子構造がナノメカニカルセンサの応答にどのように寄与するかを系統的に調べ、マクロな描像としては粘弾性体モデルに基づき応答のダイナミクスを理論式で表現することに成功した。これにより、ミクロ・マクロそれぞれのスケールにおける応答のモデルを立てることに成功したが、スケールを横断する統一的な知見を得るためにはまだ課題が残されている。ポルフィリンを元に立てたミクロスケールでのモデルにおいては、分子の構造をもとに感度・選択性の説明を行うことに成功したが、粘弾性体としての効果についてはまだ十分に説明できていないため、力学特性の評価が課題となっている。一方、マクロなモデルである粘弾性体モデルでは、ガスの拡散時定数や分配係数といった化学的なパラメータの寄与を定量的に評価することに成功しているが、これらのパラメータがミクロなパラメータを用いてどのように表現するかについては、まだ理解が進んでいない。 一方で、センサの応答をブラックボックス化してそのダイナミクスを記述する伝達関数モデルについても研究を進めている。これは、測定系を一つの線形な入出力系ととらえることで、センサの応答をガスの入力と伝達関数の畳み込みで表現する数理モデルである。このモデルでは、伝達関数はガス種と感応膜により決まるため、これを元に応答のダイナミクスを解析することが可能である。平成30年度は、ポリマー・ナノ粒子を感応膜材料としてガス測定を行い、様々な組み合わせについてその伝達関数の評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、ポリマーやナノ粒子、ポルフィリンを感応膜材料として、それらのセンサとしての応答特性を評価してきたが、マクロなモデルとミクロなモデルを融合させるためには統一した材料プラットフォームにて研究を行う必要がある。そこで最終年度となる平成31年度は、グラフェンを感応膜材料としてその構造を系統的に変化させることで、ミクロな状態がどのようにマクロなセンサ応答特性に寄与するのかの評価を行う。これまでの研究で、酸化グラフェン(GO)をナノメカニカルセンサの感応膜として使用した場合に非常に高い感度が実現できることが明らかになっており、またグラフェンはそのナノ構造を変化させることが容易であることから、ナノ構造を変化させながらそれがマクロな特性にどう寄与するのかを評価する材料プラットフォームとして最適である。さらにグラフェンは、パイ共役系を有する分子と強く相互作用することから、これまでに研究を行ってきたポルフィリンとハイブリッド材料を作ることが可能である。このようなハイブリッド材料を用いることで、ポルフィリンの特性に基づいて選択性をチューニングすることが可能となり、かつグラフェンの力学特性を活かした高感度センシングが可能となる。 さらに、伝達関数を用いた解析についてもその科学的な解釈について研究を進めていく予定である。これまでの研究から、センサの応答を伝達関数を用いて表現することに成功しているが、その科学的な解釈(理論モデルとの対応)は十分に行えていないことから、感応膜の構造パラメータを変化させた際の伝達関数の変化を調べ、伝達関数モデルと理論モデルの対応付けを行う。
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Remarks |
平成30年度文部科学大臣表彰科学技術賞開発部門受賞
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Research Products
(13 results)