2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14135
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山路 晃広 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20779722)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機結晶 / 中性子 / シンチレータ / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子検出器用シンチレータとして、有機結晶の研究開発を行った。将来の中性子利用において、数ナノ秒以下の速い蛍光寿命が求められている。有機結晶では、数ナノ秒以下の蛍光寿命を有するものがあり、高速応答が実現可能である。また、中性子の反応断面積が大きい水素を多く含むため、中性子の検出効率が高く、高速中性子でも検出可能かつ潮解性がないという特徴を有する。一方、既存の有機シンチレータは低融点で温度上昇による劣化が起こりうる。そこで既存の有機シンチレータより高融点で、高速応答・高発光量な有機結晶の開発を行った。 本年度は、発光を司るπ結合を含むものを育成候補材料として有機結晶を育成した。特に、ベンゼン環を有するClHmOnやClHmNn(l,m,nは任意の数字)で表現される物質もしくはその一部置換分子を中心に探索した。中でも240℃以上の融点を有するCarbazoleがα線励起時にCarbazole:~10,800 photons/5.5 MeV(α)の高発光量を示した。これは、典型的な有機中性子シンチレータ結晶であるtrans-Stilbeneのおよそ2倍の発光量である。他にも、Carbazoleの一部置換分子やBis-MSB等の結晶育成を行った。 また、結晶育成に関して本年度目標としていた2インチ径のp-terphenyl結晶の育成にも成功した。検出器応用に向けて結晶の研磨手法の開発を行うとともに、エッチングについて複数の有機溶媒を用いてエッチング条件の検討を行い、良好なエッチング条件も見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度目標としていた2インチ径の結晶育成にも成功するとともに、エッチングによる発光量の増大など結晶育成・加工については良好な結果が得られている。結晶の探索については、Carbazole等の高発光量かつ高温耐性を示すシンチレーション結晶を見出すことができた。ただし、上記の結果を受けて、その一部置換分子を中心に探索を進めたため、もう一方の探索候補材であるである近似構造式を持ちながらσ結合とπ結合が異なる物質については、来年度に探索することとした。育成手法については、Self-seeding vertical Bridgeman 法による育成が安定しているため今後もこちらの方法を用いるが、候補結晶によっては高温での分解が見られたため溶液成長法による育成も検討している。 評価についても粉末X線回折、FTIR法、NMR法による相分析・構造解析を行った。また、透過率、発光励起波長、および蛍光寿命といったフォトルミネッセンス評価をした。加えて、分光器を用いた、X線、アルファ線および中性子励起による発光波長スペクトル測定、発光量、および蛍光寿命の評価した。温度特性評価や放射線耐性評価等も順調に測定できている。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶育成としては、引き続きπ結合を含むもの、ベンゼン環を有するClHmOnやClHmNnで表現される物質もしくはその一部置換分子及び近似構造式を持ちながらσ結合とπ結合が異なる物質を中心に育成を行う。結晶・発光特性評価についても本年度と同様に行うが中性子検出に向けて波形弁別法を実施する。これはバックグラウンドノイズ源となるガンマ線の信号と中性子線の信号の弁別性能を評価するものである。更に、中性子検出器の開発を進め、育成した2インチ結晶からアレイを切り出しや、有機溶媒による表面のエッチング処理を行い、協力者とともに検出器への搭載を行う予定である。 また、格子定数、発光波長および発光量の変化についても考察することで、配位子場と発光特性の相関の解明を推進する。
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Research Products
(4 results)