2018 Fiscal Year Research-status Report
Film structure evolution and magnetic property improvement of Pd alloy film by hydrogen
Project/Area Number |
18K14137
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
春本 高志 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80632611)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素化 / パラジウム合金 / 磁性薄膜 / 膜改質 / 応力 / 磁歪 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ICT・IoT技術の発展に伴い、膨大なデータが日々生産されている。また、今後も「スマートシティ」や「Society 5.0」の始動と共に、データ量の増大が見込まれる。そのため、データを保存する磁気記録装置、特に、ハードディスクドライブ(HDD)の高密度化は急務である。垂直磁気記録方式は、高密度記録を可能にするものであるが、更なる発展に向け、より大きな垂直磁気異方性を有する薄膜が求められている。現在、磁性金属と白金族金属との規則化合金は、大きな結晶磁気異方性を有するので、最も期待されている材料である。しかし、薄膜作製直後のas deposited状態では、結晶性が悪く、また、規則化の程度も低く実用に耐えない。したがって、熱処理に代表される膜改質プロセスが必要となる。しかし、熱処理は高温を用いるので、熱応力による膜の多層構造の崩壊、膜剥離・ヒロック、基板反り等の副作用をもたらす。よって、ハードディスクへの応用は非現実的である。 本研究は、こうした状況を鑑み、革新的な膜改質方法として“水素処理プロセス”を提案する取り組みである。具体的には、パラジウム(Pd)と磁性金属(M = Fe, Co, Ni)の合金をPd-Mとして、次に示すプロセス、『 Pd-M薄膜 → 水素化 ⇔ 水素化Pd-M薄膜 ⇔ 脱水素化 → Pd-M薄膜 』により、Pd-M薄膜を膜改質(応力制御・結晶性向上・規則化促進)し、それにより良好な磁気特性、特に、垂直磁気異方性を得ることを試みている。本プロセスは、室温で実施できるという点で従来法より優れている。更に、本プロセスで使用する水素は気相として導入可能であるため、既存の薄膜作製装置への適用が容易であり、膜改質プロセスの基盤的技術に成り得る。現在、水素処理中における膜中応力・歪について、及び、膜中応力と磁気特性との関係について実験的に鋭意調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『 Pd-M薄膜 → 水素化 ⇔ 水素化Pd-M薄膜 ⇔ 脱水素化 → Pd-M薄膜 』プロセスを実現するために、Pd-M薄膜を大気に一度も取り出すことなく水素処理できる機構を組み上げた。そして、本機構を用いて水素処理を行ったところ、順調に水素化が進行することを確認した。また、この水素処理プロセスにより、磁気特性も制御可能であると判明した。したがって、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
『 Pd-M薄膜 → 水素化 ⇔ 水素化Pd-M薄膜 ⇔ 脱水素化 → Pd-M薄膜 』プロセスにより、Pd-M薄膜の磁気特性は制御可能であると判明している。しかし、更に良好な磁気特性(垂直磁気異方性)を得るには、薄膜の基板密着性を高め、水素化時における膜剥離を抑制する必要がある。そのため、今後は、水素処理プロセスの全容を解明すると共に、薄膜の基板密着性を高めるべく、薄膜/基板間への下地層導入を試みる。
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Remarks |
学会発表の3件目は、若手研究者表彰・優秀賞を受賞
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