2019 Fiscal Year Research-status Report
Film structure evolution and magnetic property improvement of Pd alloy film by hydrogen
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18K14137
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
春本 高志 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80632611)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水素 / パラジウム合金 / 磁性薄膜 / 磁気異方性 / 磁歪 / 磁気弾性効果 / 応力 / 欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に作製した実験装置を用いて、Pd-Co合金薄膜、Pd/Co多層薄膜、並びに、Pd-Ni合金薄膜について研究を行った。その結果、本合金系における磁気異方性の主たる起源は、表面効果と磁気弾性効果(逆磁歪効果)の2つであると判明した。磁気異方性エネルギーの観点から、その大小関係を定量的に評価したところ、膜厚:数十 nm程度、かつ、膜中応力:GPa程度の条件では、磁気弾性効果>>表面効果であった。そして、表面効果を除去した磁気異方性エネルギーは、膜中応力に対し線形関係を示し、その傾きから磁歪定数を算出したところ、大きな負の値であり、既報のバルク値とおおむね一致することを確認した。したがって、磁気弾性効果が優位となる条件下においては、膜中応力により磁気異方性を完全にコントロールすることが可能である、特に、磁歪定数が負であるため、引張応力の時に垂直磁気異方性が得られると判明した。したがって、水素化により一旦、格子膨張させ、その後、脱水素化により格子収縮させるという水素処理を行うことで引張応力を導入し、それにより、垂直磁気異方性を発現させることができる、即ち、膜改質可能と結論された。 更に、応力のみならず膜中に存在する欠陥量も、磁気特性に大きな影響を及ぼすため、欠陥量の定量評価をWilliamson-Hall法により行った。その結果、膜中に存在する欠陥は、単純な点欠陥というよりも寧ろ転位などの複雑な欠陥が多く入っている、また、その欠陥量と飽和磁化とは、線形関係を有していると判明した。更に、欠陥量が少ない程、水素吸蔵も抑制され、それ故に、水素に起因する更なる欠陥の発生も抑制できると明らかになった。そのため、成膜時に導入される膜中の欠陥量が、水素処理プロセスの成否を決める重要な因子であると判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、薄膜中の応力・欠陥量が磁気特性に及ぼす影響、並びに、応力・欠陥量と水素吸蔵量の関係性を明らかにすることができたので、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、水素による膜改質・磁気特性制御は、熱処理のそれと比べどの程度であるのかについての比較実験を行う予定である。また、水素に起因する欠陥が磁気特性に及ぼす影響については未だ不明な点が多く残るので、こちらについても研究を行う。
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Remarks |
雑誌論文の1件目は、Editor's pick論文に選出された。
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