2021 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study on electron-hole dynamics driven by strong light electric field
Project/Area Number |
18K14145
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
篠原 康 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, リサーチスペシャリスト (90775024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高強度場物質科学 / 原子論的シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度超短パルスを固体に照射した際にみられる現象は、専らエネルギーと波数で特徴づけられる波数空間ベースの表現で理解が試みられてきた。特にgrapheneにおいて、非対称超短パルス中赤外光を照射すると、波数空間における二つの非断熱トンネル遷移の干渉により、直流電流が発生し、パルスの非対称性をコントロールすることで、その向きを制御できることが報告されている。本研究では、強束縛模型を用いてgrapheneの電子状態を記述することで、この直流電流制御現象が原子スケールでどのようにみられるのかを明らかにした。その結果、流れている直流の電流密度は殆どの状況ではgrapheneのπ-π*結合に沿って流れ、かつ空間的に一様な方向を向いていることが分かった。一方で、電場強度を変化させた際に直流電流が向きを変える強度領域では、場所に応じて電流密度が異なり、その総和として電流が流れなくなることを示した。 電子を量子力学に従って記述する電子・原子ダイナミクスシミュレーション手法は計算コストが重く、数十ナノメートルにわたった物質中で原子と電子がどのように光電場からエネルギーを吸収し、そのエネルギーを相互にやり取りするのかを原子スケールから記述するのは困難である。金属原子クラスターにおいて有用性が報告されていた、位相空間における分布関数を古典粒子の分布で模擬する擬似粒子法を用いて、バルク物質を記述する理論的枠組みを構築し、バルクAlを対象に原子を止めた状態でのベンチマーク計算を行った。電子を量子力学的に扱う時間依存密度汎関数理論を基準に、擬似粒子法の誘電応答、非線形光吸収を評価したところ、計算コストが1/50程度も小さいにもかかわらず、高精度に電子の光吸収過程を記述していることを示した。大きな計算コストの削減により、原子運動と結合させたより現実的な系のシミュレーションに向けた基礎となった。
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