2018 Fiscal Year Research-status Report
低濃度、小容量の光受容体膜タンパク試料における動的構造観察手法の開発
Project/Area Number |
18K14146
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小原 祐樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10752032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ポンプ・プローブ分光 / シングルパルス分光 / フェムト秒 / 光受容体タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
膜タンパク質群は多くの疾患に関わっており、その機能を制御する分子標的薬創薬のターゲットとして注目されている。その機能は高次構造によって決まっており、その生理活性作用時の動態も含めて観測できる検出効率の良い観測方法の開発が必要な状況にある。本研究課題では、光受容体タンパク質の動的構造変化が観測可能なフェムト秒パルスレーザーを用いた超高速分光をベースに、信号取得方法の改良と信号増強を組み合わせることで、膜タンパク質に特有な低濃度、小容量という状況で効率の良い信号取得方法を開発する。また、遺伝子組換え大腸菌を利用して変異体を発現させ比較測定することで、分光測定以上の情報を引き出すことを試みる。 平成30年度は、レーザーパルスの繰り返し周波数に同期したシングルパルス分光計測と高速時間掃引ポンプ・プローブ分光法を組み合わせた計測装置を開発した。本装置では試料透過光を分光し512ピクセルの1次元CMOSイメージセンサに照射し、パルスの繰り返し周波数10kHzに同期して高速に読み出すことができる。現在までに、装置の動作試験としてフェムト秒領域で比較的大きな光吸収変化が観測されている発光ポリマーMEH-PPVを試料として測定を実施し、信号変化を確認した。 光受容体タンパク質試料に関しては、これまでに超高速分光の報告のない好熱性細菌のロドプシンを対象として、遺伝子組換え大腸菌により発現・精製することを目標に研究を実施した。近縁種の発現例を参考にプロセス開発を行い、定常吸収スペクトルやウェスタンブロット法から目的のタンパク質が得られていることを確認した。また、光散乱が少ない高純度な試料を得る精製法についても知見が得られた。これは微弱なフェムト秒領域の時間分解吸収スペクトルを検出する上で重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はシングルパルス分光計測と高速時間掃引ポンプ・プローブ分光法を組み合わせた測定装置の開発、並びに遺伝子組換え大腸菌による光受容体タンパク質の発現プロセスの構築を計画し、実施した。装置開発については、大きな信号変化が得られる試料での試験測定までは完了した。予定していた従来の測定方法との定量的な比較は現在考察している最中であり、ほぼ計画通りに進展している。光受容体タンパク質の発現については、目的の試料が得られた。当初の計画にはなかったが、試料の精製プロセスの面から検討を行い、光学測定に適した低光散乱かつ高純度な試料を得る手法の探索を行い最適な精製プロセスを構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した装置で光受容体タンパク質のフェムト秒時間分解吸収スペクトル測定を行う。その後、時間分解コヒーレントラマン分光装置を構築し、ラマン増強の検討を進める。タンパク質試料に関しては、正常な光受容膜タンパク質での過渡吸収、時間分解ラマン測定の結果を解析し、先行するX線回折によるロドプシンの立体構造との比較から構造異性化に関係する周辺構造の候補を検討する。それらを変異させる遺伝子配列を決定し、大腸菌へ組み込むプラスミドベクターを設計し大腸菌による発現させ、これを用いた測定比較を行う。
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Causes of Carryover |
時間分解ラマン測定用光学システムの設計に変更が生じたため、部品選定が遅れ、次年度使用額が生じた。計画通り時間分解ラマン測定用光学システムの部品購入に当てる。
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Research Products
(4 results)