2018 Fiscal Year Research-status Report
局所空間相関長は定量位相画像に基づくラベルフリー組織診の有効なマーカーとなるか
Project/Area Number |
18K14150
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
高林 正典 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (70636000)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 定量位相イメージング / ディジタル組織診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「定量位相画像の局所空間相関長はラベルフリー組織診のマーカーとして有用か」を研究することである.初年度は,(A)定量位相イメージングシステムの構築と定量位相画像の取得,(B)局所空間相関長の高速計算法の提案と実装,(C)良性および悪性乳がん組織のスクリーニング評価のうち,(A)および(B)に関する研究を行う予定であった.しかしながら,顕微鏡の納期等の関係で,(A)を行うには準備期間がかかりすぎるという問題があり,まずは協力研究者であるG. Popescu教授(米・イリノイ大学)から既存の乳がん組織の定量位相画像の提供を受け,(B)および(C)に関する研究を先に行った.また,(C)に関しては,グレードに関するデータが得られたので,より詳細なスクリーニングである悪性のグレード間識別を試みた. その結果,乳がん組織の定量位相画像から局所空間相関長マップを従来の50%程度の計算時間で獲得することに成功した.また,その結果を用いて,乳がん組織の良性-悪性(グレードI,II,III)識別や,低リスク(良性およびグレードI)-高リスク(グレードIIおよびグレードIII)識別が可能であることが確認できた一方で,近接グレード間(良性-グレードI,グレードI-グレードII,グレードII-グレードIII)の識別は困難であることが明らかになった.今後は,(A)に関連して,定量位相イメージングシステムを構築して胸部以外の組織アレイに対しての評価を行うとともに,近接グレード間の識別を行う方法を検討する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顕微鏡の納期が想定していたよりも長くなった関係で,協力研究者の協力の下,当初計画とは研究計画の順番を変更する必要が生じたが,研究は概ね順調に進捗していると言える.(A)定量位相イメージングシステムの構築と定量位相画像の取得に関しては,構築予定としていたSLIM(Spatial Light Interference Microscopy)の構築とテスト計測を完了し,あとは複数の視野を結合するなどの処理を行うためのソフト的な処理を残すのみである.(B)局所空間相関長の高速計算法の提案と実装に関しては,研究実績の概要でも述べたように,既存の定量位相画像に対して実行しているので既に完了している.(C)良性および悪性乳がん組織のスクリーニング評価に関しても,先に述べた様におおむね完了しているが,本研究の目的を達成するためには複数の組織について局所空間相関長の病理マーカーとしての有用性を確かめる必要があるほか,近接グレード間(良性-グレードI,グレードI-グレードII,グレードII-グレードIII)の識別を行うためにさらなる検討が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,SLIMシステムの構築および様々ながん組織の局所空間相関長マップに基づくディジタル病理診断を中心に行う.現在は,肺がん組織アレイの定量位相画像をSLIMによって取得し,乳がん組織と同様の手法によって局所空間相関長マップを獲得するべく準備を進めている.そこから組織内の平均値や分散値を抽出し,グレード間の識別にとって統計的な有意差を生じさせる条件を明らかにする.その他の組織についても進捗状況を見ながらなるべく多く対象としていく. また,乳がん組織スクリーニングにおいて,局所空間相関長のみでは近接グレード間(良性-グレードI,グレードI-グレードII,グレードII-グレードIII)の識別が困難であるという問題が顕在化した.この問題を解決するには,局所空間相関長の算出方法やパラメータの選定方法の改善というよりはむしろ,複数の病理マーカーを組み合わせるアプローチが有効であると考えられる.そのため,複数のマーカーを適切に組み合わせてディジタル病理診断の精度を向上させるために,機械学習を用いた手法なども検討する.
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Causes of Carryover |
顕微鏡の納期が想定よりも長く定量位相イメージングシステムの構築が遅れたため,計測対象とする組織アレイの購入を次年度に回す必要があった.繰り越し分は,組織アレイの購入費および研究発表に係る渡航費等のために支出する.
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Research Products
(4 results)