2018 Fiscal Year Research-status Report
福島原子力発電所の汚染水条件でのアクチノイドコロイド反応の解明
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18K14160
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
大内 和希 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (10760407)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アクチノイド化学 / コロイド / 電解析出 / 電気化学水晶振動子マイクロバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アクチノイドイオンの①原子価変化,②コロイド・微粒子化,③汚染水中で想定される無機イオンとの相互作用を明らかにすることによって,福島第一原子力発電所事故で発生した汚染水に近い原子価変化やコロイド反応などを含む複合反応系の解明を目指す.平成30年度はアクチノイドとしてネプツニウム(Np)の原子価変化に誘起される析出反応の挙動を調査し,先行研究で実施していたウラン(U)の析出反応と比較した. pH 3と4のNp(V)溶液のサイクリックボルタモグラムを測定したところ, pH 4でより正電位で還元種が析出したことから高pHで析出しやすくなることが確認され,Npの析出反応にもU同様水酸化物の関与が示唆される.一方,Np(V)がNp(IV)へ還元する電位として-0.75 Vを印加し還元電流及び析出量の時間変化を測定したところ,電解開始直後より還元電流及びNp析出物が観測されたが,1.6 μg程度(析出化学種10層程度相当)の析出で還元電流が観測できなくなり析出量が一定となった.この析出挙動は,電解とともにU(IV)が析出し続けるUと大きく異なる. この反応挙動は電極表面が析出物で覆われることによりNp(V)の還元が阻害されることが示唆されることから析出物の電気抵抗値によって明らかにできると考えた.そこで析出物のインピーダンススペクトルを測定し,析出物を有する電極の等価回路に基づきスペクトルを解析することで各析出物の電気抵抗値を得た.U(IV)とNp(IV)析出物の電気抵抗値は,それぞれ6.7×108 Ω/mol,1.1×1014 Ω/molとなり,Np(IV)析出物はU(IV)析出物よりも電気抵抗値が約15万倍大きかった.よって,Np析出物によるNp(V)の還元反応の阻害は,電気抵抗の大きさによることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①原子価変化について,ネプツニウムの原子価変化に誘起される析出反応の挙動を調査し,析出が一定量で電解が停止する点でウランと異なることを見出し,この反応の違いが析出物の電気抵抗値によることを明らかにした.よって,アクチノイド元素の違いにより電解析出挙動が大きく異なるという新しい知見を得ることができたことからおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
ネプツニウム及びウランの析出反応挙動は明らかにしたが,析出物の化学種までは明らかになっていない.そこで,次年度は②コロイド・微粒子化の化学状態について,析出物のフロー電気化学水晶振動子マイクロバランス及び分光測定により明らかにする計画である.
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Causes of Carryover |
平成30年度はネプツニウムの電解析出挙動及びウランの挙動と異なる要因を明らかにすることを優先し,当初計画していた析出物の化学状態分析を次年度以降に実施することとした.そのため析出物の化学状態分析に係る費用が次年度使用額として生じることとなった.次年度使用額は翌年度分経費と合わせて分光測定用物品の購入等に使用する予定である.
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