2018 Fiscal Year Research-status Report
光共振器内の吸収飽和現象を利用した革新的な同位体分析法の開発
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18K14162
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
桑原 彬 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 バックエンド技術部, 技術・技能職 (50732418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 同位体分析 / レーザー分光 / 光共振器 / 吸収飽和 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、高反射ミラー(反射率99.99%)から構成される光共振器を用いた高感度レーザー吸収分光システムを開発し、アルゴンガスを作動ガスとしたグロー放電プラズマを用いて、アルゴン原子の吸収スペクトル826nmの取得を試みた。高感度法のうち、まずは、キャビティーエンハンスト吸収分光法(CEAS: Cavity Enhanced Absorption Spectroscopy)により、アルゴン原子の吸収スペクトルの観測に成功した。また、高感度化については、約2,000倍程度の感度向上を達成できることを確認した。 次に、レーザー強度をパラメータとして、吸収スペクトルの形状変化の観測を試みたところ、レーザー強度が上がるにつれて、スペクトルピーク値が数%減少することを確認した。この現象は、光共振器内でレーザー光が増幅されることによる吸収対象準位の吸収飽和によるものであると考えられる。現在使用している半導体レーザー(FPレーザー)は、レーザー線幅がアルゴン原子のローレンツ広がりよりも大きいため、次年度以降は、レーザー線幅の狭い外部共振型半導体レーザーを用いることにより、ドップラーフリースペクトルの観測を試みる。また、同時にキャビティーリングダウン分光法(CRDS: Cavity Ring-Down Spectroscopy)の適用にも着手する必要がある。この手法は、レーザー強度(共振した信号の強度)に依らないため、共振条件が安定しない場合でも、スペクトルの揺らぎを抑えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、当初計画のとおり、本研究のベースとなる高感度レーザー吸収分光システムを開発することができ、吸収飽和に関する基礎的なデータを取得することができたことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザー線幅の狭いレーザーを用いることで、本研究の目的であるドップラーフリースペクトルの観測を試みる。光共振器からの透過信号の強度にばらつきがあるため、高反射ミラーを空間掃引する等により、共振条件を改善しながら、検討を進める必要がある。
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Causes of Carryover |
高感度レーザー吸収分光システムに係る物品費を当初計画に比べて安価に抑えることができたことにより、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、平成30年度の成果について発表の依頼を受けた国際学会での招待講演(平成31年4月)に係る旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)