2020 Fiscal Year Research-status Report
微生物由来の水酸化鉄を用いた水環境からのレアアースの回収
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18K14172
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 早希子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), ポストドクトラル研究員 (50758852)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水酸化鉄 / 鉄酸化菌 / レアアース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、微生物由来の水酸化鉄(Biogenic iron oxyhydroxide: BIOS)へのレアアースの濃集実態および、濃集メカニズムの理解を通して、BIOSを用いた新たなレアアースの回収法につなげることである。昨年度までの研究から、有機物によって負電荷に変化したBIOSに陽イオンのレアアースが引き付けられることが濃集要因の一つであることが明らかになった。しかしながら、天然に存在するBIOSの固相状態(e.g.水酸化鉄/有機物比)がレアアースを回収する上で必ずしも最適条件とは限らない。以上の点をふまえ、今年度は水酸化鉄と有機物を様々な割合で混合した"模擬BIOS"を合成し、レアアースの回収を考える上で最も適した固相条件を考えた。 BIOSの吸着能を促進させていると考えられるカルボキシル基を含むアルギン酸を0.5-5wt%に変化させた模擬BIOSを合成した。その後、模擬BIOSの(i)XRD分析による鉱物種解析、および (ii)ゼータ電位の測定を行ない、有機物の量によって吸着に関わる鉱物種や表面電荷がどのように変化するか調べた。模擬BIOSはアルギン酸の量に関係なく結晶性の低い水酸化鉄(Ferrihydrite)からなり、有機物を全く含まないFerrihydriteと比較すると、より細粒であることが明らかになった。表面電荷はpH4~10の範囲で負電荷を帯びており、有機物量が多いほどpH4~6にかけてのゼータ電位は低くなるものの、pH6-10の範囲では有機物量に関係なく類似した値が得られた。BIOSがより負電荷であるほど陽イオンのレアアースを静電的に引きつけやすいことを考慮すると、pH6を上回る環境でレアアースを回収する場合は、有機物量のより多い模擬BIOSが効率的にレアアースを回収できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、予定していた模擬BIOSの合成、固相のキャラクタリゼーションは問題なく行えた。一方、コロナ禍の影響で出勤・出張が制限されたことを受け、当初予定していた模擬BIOSを使用したレアアースの吸着実験、天然での検証までは行うことができなかった。したがって進歩状況はやや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下に示す2つの研究計画を実施する予定である。 1. 固液分配実験 合成した模擬BIOSを使用し、pHおよび初期レアアース濃度を変化させた系で吸着実験を行う。その上で、レアアースを最も吸着する模擬BIOSを決定する。 2. 天然でのレアアースの回収実験 海水や河川水など天然の様々な環境に模擬BIOSを数日から最大6ヶ月設置し、実際に模擬BIOSにレアアースが効率的に濃集するか実環境で検証する。
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Causes of Carryover |
予定していた現場実験および学会参加に困難が生じたことに加え、室内実験の遅延に伴い当初導入する予定だった恒温機能付き振とう器の納入を延期した。そのため、旅費および物品費として計上していた分を次年度に繰り越した。繰越分は今後の現場実験の旅費および振とう機の購入に使用する予定である。
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